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第42話
「あ、あの今暗殺って……」
「はい、そうでございます暗殺です。才様とマリー様の初対面もまさにその様なシチュエーションだったのでは?」
「……え……俺達の初対面……」
初対面は……
真夜中にひとんちの二階に窓から不法侵入……気配を消し謎の金縛り、素早い動きで煙のようにあっという間に逃走……
あぁ……なるほどそれっぽい。
って!!!
「あ、暗殺って!聞いてない!!」
「おや、そうでしたか?マリー様は暗殺のプロで御座いますよ」
プローーー!!!!
「それって!殺し屋ってことだよね」
「まぁ……左様で御座います。才様の世界とは異なりまして、こちらは血の気が多く争いが絶えません。他種族との争いがほとんどですが、日々何かしらの血が流れております」
「……そんな」
「戦わなくては殺られる。支配される。そんな世界です。最近はまだ穏やかになって来た方で御座いますが、まだまだ問題はつきません」
「まさかそんなことがこの世界で起こっているなんて知らなかった……」
そんな話を聞くと急に怖くなってくる。
確かに地球にも戦争をしている国はあるけど、平和な国に住んでる俺からしたら現実味が全然ない。
だけど……マリーが……暗殺とかって……本当?
「才様……」
「ルースごめん。ちょっと疲れちゃったから一人にしてくれないかな……」
なるべく普通の笑顔でルースに話しかける。
顔色が悪いと心配されたけど、無理やり追い出してしまった。
「はぁ……」
マリーの自室の椅子に腰掛けて一人ため息をついた。
広い部屋は書斎といった感じで、沢山の本が壁の棚に収められ、机やソファーが置かれている。
大きな窓からは外の景色が眺めることができるけど、ただ美しい城壁と空の景色が広がっているだけだった。
……どうしよう……
俺って何にも考えてなかった。
この国がこの世界がどういう所か……
ルースから説明された、美しく綺麗な世界ってイメージしかなかった。
「馬鹿だなぁ俺……」
ここはリアルで戦争がある国なんだ。
マリーがしていることはこちらはでは普通のことなの?
殺戮って……なんだよ。
マリーは今この瞬間も戦場にいるのかな。
手が……冷たい。
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