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第45話
声がしたと思ったら、部屋の扉の前にマリーとルースが立ってこちらを見ていた。
「あ、マリー!」
声をかけたのに、マリーはそこに立ち止まったまま微動だにしない。
それにルースもちょっとおかしい……
「マリー王子おかえり。この子凄いですよ~僕押し倒されちゃったよ」
え
「マリー王子が来るまで気持ちいいことしよ?って誘われちゃったぁ。駄目だよって言ったんだよ~。こんな可愛い子がまさか僕の事押し倒してくるなんて……こんなこと平気でするなんてびっくりなんだけど。もっと立場を考えて行動しないと駄目だよ才様?あ、ルースの教育がなってないのかなぁ」
「あ、あの?」
「才様はマリーのお仕事の内容知ったみたいでかなり動揺していたみたいだよ?おうちに帰りたいよう~って泣いてたから寂しいのかな。大目に見てあげてね。……僕は大丈夫だから」
ちょ、ちょっと待って?
どういうことになの?
俺、押し倒してないけど?
泣いてないし誘ってもないけど?
考えて行動しないとって……なんだよ。
俺からゆっくり離れたヴァーノンは、衣服を整えながら立っているマリーの元へ行き、軽くハグをしていた。
その気安さから親密な関係が窺い知れる。
えーと、この状況はもしかして……俺、大いに勘違いをされてしまっている?
「えっとマリー、ルース!あのちょっとこれには理由があって」
「……」
「才……お前……」
「ここ数日抱かれてないから寂しいってさ。脱ぎながらそう囁くんだよあの子……ああいうこと平気でできちゃう子なの?」
マリーにくっつきながらヴァーノンがマリーに囁くようにそう呟く。
それでも俺にちゃんと聞こえるように……
ある意味ワザと見せつけるように……
ルースは無表情のまま、マリーの脇に控えていてこちらを見ようともしなかった。
「……ルース、才を連れていけ」
「はい」
「ヴァノ……」
「はぁい……っ!!」
ガ……ッ!!!!!
!!!
目の前で何が起こったのか咄嗟に判断できなかった。
え、ちょっと……
床に叩きつけられたヴァーノンは、ピクリともしない。
うつ伏せに倒れたヴァーノンの顔の辺りからは赤い液体がジワリと流れ出す。
「ちょっ!」
「才様、参りますよ。失礼致します」
ひょいっとルースに抱えられてしまい、部屋から出されてしまった。
「ルース!あの人!ヴァ、ヴァーノンさんがっ!ちょっとあれ!」
「……仕方ございません。状況が最悪だ」
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