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第47話
ルースが俺の手首に何かを付けてくれた。
ブレスレット……というかミサンガっぽい綺麗な紐だった。
「これは」
「何かあったり緊急事態の時に、これを思い切り引っ張ってみてください。才様はおひとりではこちらの世界に来ることができません。まさかの事態に備えて持っていて下さい。……引きちぎるくらい目一杯ですよ。そうすると才様はこちらに来ることができます」
「はい……」
「ここに置いていたらマリー様はさらに才様に危害を加えてしまうかもしれません。……申し訳ございません。わたくしがしっかりと才様のお傍にいればこのようは事態にはならずにすんのに……」
そっとルースが俺の右手に触れる。
ズキンと痛みが走った。
右手の小指が切れて出血していたのだ。
……気がつかなかった。
マリーに払いのけられたときに傷つけたものだ。
「マリー様はこれでも精一杯自我を抑えられていたんだと思います。本当に本当申し訳ありません……」
「ルース……あの俺っ」
「大丈夫でございますよ。才様があんな大胆エロ行為できる訳がありませんから」
う……
「わたくしは信じていますから安心してください。誤解だとしても今のマリー様に何を言っても無駄でござます。暫く時間が必要かと」
「……うん、わかった」
ルースが誤解していないことにホッとして思わずルースを抱きしめると、ルースもやんわりと抱きしめてくれた。
少しだけ身体の強張りが解けるようだ。
「ルースごめん……」
「……謝る必要は御座いません。それとこれだけは忘れないでください。マリー様は才様のことをとても大切に思われておいでです。それだけは信じてあげて下さい」
「……ん」
……
……
そうして俺はまた白の扉を通って戻ってきてしまった。
……自分の部屋へと。
何も変わらない俺の部屋。
後ろを振り返れば、俺が通って来た黒い空間が歪んで小さくなりそして消えた。
見慣れたいつもの俺のクローゼット。
普通の俺の普通の部屋。
現代の平凡な男子高校生に戻った瞬間だった。
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