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第49話
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「才ちゃーん、また溜息ついてるよ」
「……」
「老けるよ~どうしたの?悩み事?石油王と何かあった?」
「ん、何でもない……」
弟の爽良 に溜息のことを言われて気がついた。
そんなについてるかな。
溜め息。
たぶん石油王とはマリーの事だろう。
母さんがどうやらマリーのことを外国の大富豪ということにして、弟に説明したみたいだった。
冷たいお茶を飲み干して、自分の部屋へと戻る。
リビングにはなぜか居たくなくて、すぐに二階へ上がってしまうんだ。
あれから数日が経ち、俺は家から出ることなく引きこもっていた。
ベッドに寝転んで考えることはいつも決まっている。
……
マリー……
マリーは今何をしているだろう。
元気にしてるかな。
……ヴァーノンさんはどうなったんだろう……まさか死んでしまったのだろうか。
あの時の血……思い返すだけで胸が苦しくなる。沢山ついていた……
俺のせいだ……俺が勘違いわれるようなことをしたからマリーはあんなことを……
俺……
「はぁ……」
ケガした右手を何となく見つめてみる。
あの時マリーに払いのけられた衝撃で、小指の爪がはがれていたのだ。
軽い傷だと思っていたけど、そうじゃなかったなぁ……ショックのせいで痛みなんてしなかったんだと思う。
「マリー……小指痛いよ……」
……痛い……
胸の奥がずっとずっと痛む。
せっかくこちらに帰って来たのに、考えるのは向こうの世界のことばかりだ。
っていうか頭の中はマリーのことばかり……
ちゃんと話がしたい。
話をして誤解を解きたい。
俺は誘ってなんかいないし。
そもそも俺があんな風に誘えるわけないし!
ガチャ
「才ちゃーん」
「……なんだよ」
「これー借りてたコンパス」
「……机~置いといて」
「ありがとね!」
「……」
「……才ちゃんさ……石油王に惚れたんでしょ」
「……はぁ?」
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