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第51話

******** ……仲直りって言ってもそんな簡単なことじゃないんだよバカ爽良。 そもそもマリーは石油王じゃないし、ロン毛だけどチャラくないし女みたいな名前だけど女じゃないし! お前の思い描くマリーは、一体どんなことになってんだ。 勘違いしてんじゃねー! 実際のマリーは綺麗で髪が長くて、偉そうで、優しくて…… 優しくて…… て? で? それで? そうだった…… ……実際の本当のマリーは、俺も良く知らないんだった。 それなのに何怒ってんだ俺。 俺が怒る理由なんてないのに…… でもマリーの事誤解されたくないし。 確かにマリーは優しかった。 俺が嫌がることはしてこなかったし。 偉そうだったけど王子だから当たり前だ。 朝も俺が起きるまでそっとしててくれてて…… 寝てるときだって…… 気がついたら抱きしめられていて恥ずかしかったけど、正直そんなに嫌じゃなかった。 あったかいなって思ってた。 ……それがない日はちょっと寂しいって思ったし。 …… …… 俺が誤解されてるのは嫌だけど、マリーのことを全然知らない自分がいてショックだった。 そもそも…… 知らないと言うか、知ろうとしなかったんだ。 されるがまま与えられるがままでヴァーノンさんが言ってたみたいに、何も考えずにほわほわ過ごしてたんだ。 行き成り連れてこられて不満で迷惑だって思ってて……壁を作っていた。 たけど、そもそも俺みたいな何の価値もない普通の子供相手に、一国の王子があんなに良くしてくれるなんて普通はあり得ない。 ……その意味を考えようともしなかった。 どこか他人事みたいで本気で向き合っていなかったんだ。 それに暗殺のこととかマリーから直接聞いてないじゃないか。 暗殺だとか殺しだとか殺戮が好きだとか全部他の人から聞いたこと。 マリーからは直接聞いてない。 マリーから聞いてないってことは……あえて俺に言わなかった?言えなかったのかも? 他人の言葉を鵜呑みにし、怖いの一言で済ませてそれを信じ切っていた自分が情けない。 本人にマリーの口からちゃんと聞きたい。 知りたい。

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