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第53話
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沢山悩んだ末、俺は後悔しない選択をした。
あれを引っ張ってみた。
思い切り……力いっぱい。
最後のワガママとして、ちゃんとマリーに謝っておきたかったから。
勘違いさせるような行動をしてしまった俺も悪い。
謝罪して、スパッと終わりにすればいいんだ。
それで殴られてもぶっ飛ばされても仕方ない。
だから、ルースからもらった紐を思い切り引っ張った。
引っ張った結果。
……
……
?????
あれ?
「……こ、ここ……どこ……」
??
浮遊感が一瞬あったと思ったら、自分の部屋ではなく外にいた。
湿った灰色の空。
砂利混じりの土。
……それと灰色の岩山……草木はなくあってもどれも枯れている。
それに……
近くに無造作に転がっている物って、ひょっとして……武器?
とても大きくて、俺には持てそうにない厳つい斧のような物が落ちている。
そして明らかに臭う……腐臭と何かが焼けた臭い。
ちょっと!
ど、ど、どこ!!?
ドキン……
ドキン……
普通の高校生でも一目見てここがヤバいところだってわかる。
辺りには黒っぽい染みが無数についていて、多分恐らく確実に血だ血!
ひぇぇ…………!!
腰が抜けて歩けず、ハイハイをして近くの大きな岩の影に隠れた。
異世界に来れたっていうのはわかるけど、ここ絶対にお城じゃない。
てっきり白の扉がある部屋に行けるものだと思ってたけど違ったぁ!!
グルルル……
……
ンギャーーーーーーー!!!!!!!!!
あれ、あれあれ絶対ヤバい奴だっ!
デカイ!デカイぞ!
全てがデカイ奴がどっすん歩いてる!!
岩を挟んで歩いている鎧を着た化け物が一瞬見えて慌てて隠れた。
……まさか俺ここで終わるのか?
喰われる?
マリーに会えないままモンスターにやられて、ゲームオーバーかよ!?
そ、そんな!!
そんなぁ!!!!
そんなことを岩に貼りついて考えていたら、ふわりと身体か浮き、目の前に世にも恐ろしい顔があった。
「んわーーーーーーーーーっ!!!」
ギラギラとした血走った瞳、土色の顔に潰れた鼻。
鬼のような大きな牙を見て完全に死を覚悟した。
見られてる!
超見られてる!!!
「……あのあの!こんにちは!いいお天気ですね!」
「グルルル……グルグル……」
グルグルグルグル言ってる奴に何を言っても無駄だろうと思いつつも、挨拶してしまう俺って何っ!
これだから俺ってやつは!!天気聞いてどうすんだ!
身体をびっくりするくらい大きな手で掴まれ、片手で軽々と持ち上げてしまうこの化け物はとっても臭い!!
しかも!
ベロン
「ギャーーーーー!!!マリーーーー!!!」
ばかでかい緑色の気持ち悪い舌で舐められた!
ネチャネチャした臭い唾液が身体にまと割りつく。
逃れようにも抜け出せるわけなく、悪臭漂う舌で何度も舐められ気を失いそうになった。
もう駄目……は、吐きそう……
臭いで……死ねるわ……
そう思ったその時、急に化け物がぐらつき、身体が地面に叩きつけられそうになる。
「才!」
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