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第54話

……あれ? 「大丈夫か!?お前!何でこんな場所にいるんだ!」 これは……マリーの声? それにマリーらしき顔が見える……で、臭い…… 「あれ、マリー?……何でいるの?」 「それはこっちの台詞だ!なんでこんな場所に!」 「あーと、これ!これを思い切り引っ張ったら……こっちの世界に来れるからって……」 「これはルースに俺があげた物だ……あの……野郎」 良くわからないけど、俺はマリーに抱き抱えられていて腕の中にいた。 マリーを良く見ると、長い髪を後でひとつに束ねているし服装も少し違う。 「とりあえずここはオークがまだいるから危ない離れるぞ。しっかり掴まってろ」 オーク?オークってさっきのデカい化け物のこと? っていうかさっきから死にそうなくらい臭いんだけど。 ひょいっと軽々と俺を抱き上げ、マリーが軽快に走り始める。 途中化け物との接触が何度もあったけど、びっくりするくらい素早く切り捨て、速度を緩めることはなかった。 ひぇ! 凄い……あんなに大きな奴をあっという間に…… 視界から見える景色は城で見た美しいものとは程遠い荒々しい世界が広がっていた。 砂漠みたいな場所で、至るところから煙のようなものが噴き上げている。 そして無数に転がっている何かの塊は恐らくさっきの化け物達…… 「……何しに……来た……」 走りなからマリーが呟く。 「マリーに会いに来た」 「……」 はっきりとマリーにそう伝え、振り落とされないようにしっかりとマリーの胸にしがみついた。 程なくすると軍の本拠地らしき場所に到着し、やっと抱っこから解放されるかと思いきや、降ろされたのは一瞬で、頭からマントを着せられ、そして再び抱っこされてしまい焦る。 「ちょっと、俺歩けるよ」 「駄目だ。ここは危ない。ノラ!」 なんだなんだと遠目からの好奇な視線を感じた。 周囲には軍人らしき人達が沢山いて、穴が空くくらい俺は見られていて何か恥ずかしい。 「はい、あれ?いかがされました?おや、君はどうしてこんな所に……って凄い臭いですね」 「先に城に戻る。後は任せたぞ」 「もう、勝利は一目瞭然ですし、ここを保持する理由もありません。後は撤収するだけですからどうぞお先に」 抱っこから降りたくてジタバタ暴れてもみるけれど、無駄な抵抗に終わり、ただ汗をかいただけだった。 はぁはぁ言って大人しくなった俺を、目の前にいたノラって人が食い入るように見ている。

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