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第56話

「……もっと知りたいの?俺のこと」 「うん」 後ろから俺の肩に顎を乗せて頬擦りをされた。 そして片手でぎゅっと抱きしめられる。 「……帰ってる間、そんなに俺のこと考えてたんだ?」 「え、考えてたよ。だってあんな感じで帰って来ちゃってショックだったし、反省もしたし……マリーに謝らないとって……だけど絶対嫌われたし、もう……会ってくれないかもって思って……」 「才のこと嫌いになんてなってない……そうか……俺もずっと才のことを考えてた」 「そうなの?」 「酷いことをしたなって……悪かった」 ぎゅっと抱きしめられてホッとした自分がいた。 チュっと何度も首筋にキスをされたけど、不思議と嫌ではなかったから何も言わなかった。 仲直りができたことが何より嬉しい。 嬉しい~! 「うん、俺もごめん」 「そろそろ城に到着する。降下するから舌噛むなよ」 「え、はい!ーーーひゃっ!!!!」 …… か、噛んだ。ちょっと舌噛んだわ! 急降下ではないにしろ、素人がいるんだからもう少し考えてくれたっていいだろ! 城へ到着するなり、驚いた様子のルースが飛んで来た。 「さ、さ、才様!!!?」 「ルース久しぶり!これ使っちゃった!うわっ!」 着いた途端にまたマリーに担がれてしまった。 「話は後だ。まずはこの汚れを落とさないと。オークの涎は臭くてたまらない。才が涎まみれだ」 「オ、オークの涎ですか」 「マリー!俺、歩けるってば!」 「歩かなくていい」 「は?何それっ!」 「城が臭くなる」 「!!」 それを言われたら何も返すことができない。 明らかに今の俺は臭いし、そんな俺を抱っこしていたマリーも当然臭かった。 素直に抵抗することをやめてマリーに身をまかせると、その様子にマリーは満足したようだ。 「いい子だ。ちゃんと綺麗にしてやる」 「……はぁい……」 ……何となくマリーが笑っているように思えたけど、確認することはこの体制からはできなかった。 ……… ん? 綺麗に?とは?

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