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第57話

マリー こんな場所で才の声が聞こえるなんてあり得ない。 そう思った。 オークを狩っている最中に幻聴なんてヤバい…… しかし再度はっきりと聞こえ、しかも俺の名を叫んでいるではないか。 考えるよりも瞬時に身体が反応し、背後の岩山を駆け登る。 その下を見れば、オークに捕らえられている才がベロベロと舐められていた。 オークが舐めるのは気に入られた獲物だけ。 ある意味求愛行動でもあったのでぶちギレた。 俺様のモノに何をしてやがるこの糞!! こんな場所に才がいるなんて信じられない。 信じられないけど目の前には確かに才がいる。 あの事件があってから才に会うことに躊躇い続けていただに信じられなかった。 だけど……!戸惑っている場合ではない! 糞オークを仕留めることは容易だ。 剣でひとなでしてやれば良いだけ。 もう頭の中は才のことでいっぱいで、オークの悪臭も苦ではない。 しかも才は俺に会いに来たと言った。 ……マジか…… 早く安全な場所に移動してやらないと、才に万が一のことがあったら大変だ。 じゃないと俺が発狂するだろう。 才にケガでもさせてみろ。 マジでオーク軍すべてを壊滅し滅亡させてやる。 才を抱えて基地へと戻った。 相変わらず軽い身体で、落とされないように必死でしがみつく姿はいとおしくてたまらない。 仕事なんてどうでもいいから、早く城に帰り思い切り才を抱きしめたかった。 抱きしめてキスをしたい。 勿論その先も…… 傷つけてしまったのに自分の欲望は膨らむばかりだ。 あの日自分の感情をコントロール出来ず、怒りに任せてしまった。 はじめての嫉妬だった…… 許せなかった…… 冷静に考えてみたら才が誘うわけないし、 第一才を抱いたこともないのだから、あんなことをヴァノに言うはずがない。 …… 才を傷つけてしまった。 あれから才のことを考えない日はなかった。 謝るのは俺の方。 抱きしめていないとどこかに行ってしまいそうで、不安で放せなかった。 絶対に離したくない。

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