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第63話
……表情は……いつものマリーに戻っている。
「……俺、邪魔じゃない?」
「なんで」
「だって髪整えてる最中だろ?作業の邪魔かなって。マリーの髪がいつもサラサラしてる理由がわかったよ。職人技だね」
「は?」
「マリーってさ、本当に王子様なんだね」
「なんだよそれ」
「うわ!」
頬杖をついていたマリーにぐいっと引き寄せられ、抱きしめられる。
クンクンと髪の匂いを嗅がれ、そのまま耳にキスをされた。
先ほどまでの悪臭はどこへやら、華やかな香りに包まれたマリーの逞しい胸や唇についドキドキしてしまう。
「……臭い消えたな。いい香り。オークが才を舐めた理由さ分かる?」
「え、舐めた理由?何だろう……餌だから?」
「オークは気に入った獲物を舐めて自分のモノだと他者に対して示す習性がある。マーキングだな。あいつは才のことが気に入ったみたいだぞ」
「……き、気に入られたの……俺……」
「しかも性的な意味合いが強い……まぁ犯されて最終的に餌になるんだけどな」
「……え!えええ!!」
「っとに……あの時はマジで驚いた……あんな場所に才がいるなんて夢にも思わなかったし」
「うん……俺もびっくりした。全然知らない場所で……凄く大きな武器が転がっていて心臓止まるかと思った。あ!この紐の使い方を俺がちゃんとルースから聞いておけば良かったんだ!本当!うん!」
「……」
不意に顎に触れられたかと思ったら、顎を指先で撫でられキスをされた。重なる唇はなかなか離れず……焦る。
ちょちょちょちょちょっと!
お姉さん達に見られてるっ!!
そう思っただけで顔から火が出るくらい恥ずかしくて慌ててしまうけど、マリーは全然気にする様子はなく、更に深いキスをしようと身体を引き寄せる始末。
「ん……っちょっと!……マリー!」
「……」
「き、聞いてるの!?部屋!もう部屋に帰ろうよ!」
「……」
「……はぁ……はぁ……」
暫くじっと俺の顔を見つめていたマリーは、フッと不適な笑みを浮かべ、
「そうか、じゃあ部屋に戻ってから続きをしよう」
そう言って立ち上がったから、俺の脳内は真っ白になった。
ひぁ!
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