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第66話

「でも、御心配なく」 「……良かった……」 目の前に変わらない姿のヴァーノンさんがいて、ホッとしてしまった。 あの時は怪我どころではなく死んでしまったのではないかと思ったから本当に良かった。 「……俺は殺すつもりで殴ったけどな」 「マリーの馬鹿!そんなこと言っちゃ駄目!」 「あれくらいじゃあいつは死なないんだよ」 「死んじゃうよ!」 「残念でした。本当に僕は死なないんだよ~~~!才様っていい子だねぇ。っていうかマリー王子のことを馬鹿なんて言っちゃう才様の方が遥かに恐ろしく死に近い」 「え?」 「ヴァノは死なないんだ。本当に」 「そう!僕の身体は特殊でさ、回復能力が強く怪我をしてもすぐに再生してしまうんだ。だからあれくらいのダメージじゃ死なないんだよ。安心して!」 「そう……なの?」 「そう!不老不死っていうの知ってる?僕は首をとられても死なないタイプ。才様の世界にはいないかな?だからあれくらいじゃ死なないんだよ。安心してね!」 「……」 「本当だ。だから俺も本気で殴った。ヴァノの再生能力は知っていたから。才がそんなにあいつのことを心配していたとは知らなかった。悪いな」 不老不死って勿論知ってるけど、本当に? でも目の前に立っているヴァーノンさんは元気そのもので、怪我一つしていない。 そっか……本当良かった…… 気が抜けて脚に力が入らずマリーにしがみついてしまった。 既にマリーの腕の中にいたので、倒れることはない。 「……才、大丈夫か」 「う、うん……気が抜けた。はは……こんなことで……みっともないね俺」 「抱っこしてやろうか」 「え、いい!大丈夫!」 「遠慮しなくてもいいのに」 「大丈夫だって」 顔が近くまたキスされそうな距離感で、戸惑う。 マリーの吐息がかかりドキドキしてしまう。 「あ、あーーもしもし?僕の存在忘れてなーい?目の前でイチャつかないで欲しいんだけど。あのさぁ、それでまだセックスしてないの?てっきり早々に済ませてるものだと思っていたから失敗しちゃったしなぁ。それにあんなにマリー王子がキレるなんてのも想定外だったし?才様も普通に普通な子で扱いにくくてもう何なの?ちょっとからかっただけだったんだけど」 「セックスはこれからやる。ヴァノ、用が済んだらとっとと帰れ」 「だ!本当酷いんだからマリー王子は……はいはい、帰りますよ」 「あ、あの!ヴァーノンさん!また改めて会いたいです!」 「……は?」 「才……会いたいってどういう意味だ」 「ちょっと!変な意味じゃないよ。ただお茶したりお話聞かせてもらえたらなぁってただそれだけだよ!」

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