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第67話
「……僕、意地悪だよ?またからかっちゃうかもしれないよ?」
「それは困るけど、なんて言うかこっちの世界のこと色々知ってそうだし、わからないこととか教えてもらえたらなって思って。魔術師ってとっても博識なイメージがあるから」
「こっちの世界……んなこと、俺に聞けばいいだろ」
「マリーにもいっぱい聞くよ!勿論!」
「なら、ヴァノは必要ないな」
「なんで!」
「……まぁ、そうですねぇ。才様直々に御指名されちゃったら断れないよね。このヴァーノンでよろしければ喜んでお相手致しましょう」
「ありがとう!ヴァーノンさん!」
「……」
「この調子だと、マリー王子も同席必須かと思いますが。この国、世界に少しでも興味を持って頂けるよう尽力致したいと存じます。何でもお答え致しますよ。それと才様、僕のことはヴァーノンさんではなく、ヴァノと御呼び下さい」
ヴァーノンさんが一礼しながそう言った。
「……ヴァ、ヴァノ?」
「はい、よろしくお願い致します。では才様、お茶会楽しみにしております。さてさて王子の雲行きが怪しいので、僕はこの辺にて失礼させていただきまーす」
ニッコリと優雅に一礼したヴァノは、クルリと背を向けて猛ダッシュして去っていった。
……は、速い!
「……あんなに長い服着て、あんなに走れるなんて凄いね」
「……」
「……マリー?怒ってる」
あ、怒ってる。
マリーの顔、さっき髪を乾かす作業の時に見た表情に近しい……いやそれ以上に険しい顔をしていた。
……
マリーの腕に抱かれながらもぎゅっと抱き返し、その胸に顔を押し付ける。
「マリーごめん。やきもち……妬かないでいいから」
そう呟いた。
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