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第79話 番外編 婚約中1

私の人生において、これ程までに緊張した日があっただろうか。 城の深部で行われる重役会議へ出席することが認められ、私はこの場所へ来ているのだ。 …… ドキン ドキン うわわあああ……足が竦みそうになる。 周囲に座っておられるのは、この国の東西南部で活躍されている幹部ばかりで、私は頭を上げることができない。 目が合ったら生意気だとして殺されるかもしれない……燃やされるかも?帰りにサクっと刺される……射られるかもっ!直視できない…… 「……ジュタ……緊張し過ぎだ」 「……ノラ様……吐いたらスミマセン……」 私の斜め前に座っているのが我が主のノラ・カルダー様である。 騎士見習いの私の社会勉強の一環として?本日私がこの会議に特別に参加させてもらえているらしいのだけど、実際のところ本当かどうか疑わしい。 だってそんな気軽に参加できる会議ではないからだ。 しかし捨て子の自分を引き取りここまで育ててくれたノラ様の言うことは絶対だし、騎士を目指し憧れている自分としては天にも昇る貴重な体験だ。 うわぁ……そしてノラ様の目の前に座られているのは憧れのコナー・ケアード様だぁぁあああ!!!! 顔を見れなくても気配で空気で匂いで誰かわかる。 私の憧れの頂点に君臨する騎士様!!しかし物凄く珍しいだろう私を射るような視線で眺めておられ、泣きそう吐きそう死にそうだ。 ……しかしここで吐いたらノラ様が大変なことになるっ! 落ち着け落ち着くんだジュタ!! そしてそして…… …… ドキドキ…… ドキドキ…… 空席になっている、ひとつの席。 中央に他とは品の別格の素晴らしい椅子が置かれていて、その椅子の主がまだ来ていなかった。 …… 私もまだお目にかかったことはない…… いや、一度遠目ではあるけれど拝見したことが…… この国の王子。 マリー・シーヴェルド様だ。 …… ひえぇ……っ! 緊張で冷たい指先が更に冷える気がする。 身分の差がありすぎて、憧れてはいけないような存在の御方だ。 庶民には雲の上の存在で、決して見ることは勿論、御会いできるなんで絶対にありえない。 そんな……そんな御方がここに? あの席に??? ありえない!と屋敷で叫び続けていたら、ノラ様に笑われたことがあった。 ノラ様はマリー王子の側近でとってもお忙しい。 ノラ様は自宅である屋敷へはなかなか帰ることができなく、それは私にとってとても寂しいことだけど、この国の為に懸命に務められておられる。 しかも王子の部下として国の中枢で立派に働いておられるのだ! とてもとっても素晴らしいことで名誉あること! ……す、凄い……私もノラ様のような立派な騎士になりたい!

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