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第81話 番外編 婚約中3
「あの、えと!そういうわけでは……しかし各地域の問題や任務の進行状況など貴重な情報などを直接聞くことができましたし、大切な会議であったと思います」
「そうだな。緊張していた割にちゃんと聞いていたみたいだな、偉いぞ」
「王子は……どうして退席されたのでしょうか」
「……」
「……な、生意気なことを言ってすみません……」
「いや、いいよ。答えは簡単だよジュタ。この会議よりも大事な用があったからだよ」
「そう……なんですか?」
「そう。この会議なら私たち家臣でいくらでもカバーできるからね。決して王子がこの会議を蔑ろにしているわけではない」
「な、蔑ろにしてるなんて思ってないですけど!」
「ははは、そうかい?今は王子にとても大事な時期だからね。本音を言うなら公務は私たちに任せておいて欲しいくらいなんだよ。王子の婚約が決まった話をしただろう?」
「あ」
「今王子が最優先すべきは会議ではないんだよ。あの御方にも色々と事情がおありなんだ」
「あ!そっか結婚式のご準備ですね!」
にこっと微笑むノラ様は、それ以上はなにも言わなかったけれど、王子は結婚式の支度でお忙しいということなんだろう。
確かにご婚礼の一報が入った時、驚く程大人たちが喜んでいたのを思い出す。それは盛大な結婚式になるだろうと泣いている者もいた。
若い私にはそこまでの感動はないけれど、普段冷静なノラ様もとても喜んでいたので、とっても素晴らしいことなのだろうと理解している。
「ご婚礼の準備も大変だよな~」
「コナー、お疲れ様」
「!!!」
うっかり叫びそうになってしまった私の頭をわしわしと撫でているのは、会議中ずっと目の前にいたコナー様だ!!
コ、コナー様……がっ!私のあたあた頭をっ!
「ふーん、このガキがノラお気に入りの新米騎士か?おいふにゃふにゃだな……もっと筋肉つけろよ」
「ふぁ、ふぁい!!」
「……あまり触らないでくれるか?」
「おー怖っ!はいはい。予定より早く終わったから俺は帰るぞ。ノラも暇だろ」
「……暇ではないが、飯くらいは付き合うぞ」
「よし決まりだ!主がヤリまくるようになったら俺達が振り回されることが減って有難いな」
?
「……え……ヤ……?」
「なんでもないよジュタ。コナーは口が悪いからね。聞き流すようにしなさい」
「……おいなんだ、その言い方は」
「ジュタに変なこと教えないでくれるか?……そうだな。コナーやはり飯は一人で食べてくれ。行こうジュタ」
「はあああぁ??ちょっと待てノラ!お前そんなキャラだっけ?過保護過ぎ!こらー!」
「あ、あの……ノラ様?良いんですか?コナー様怒っておられますよ。私のことはお気になさらず、コナー様と一緒に食事にどうぞ」
「大丈夫、放っておきなさい。コナーはいつも怒っているから大丈夫。たまにはジュタとご飯でもしようかね」
「え……えと……私とですか?」
「嫌か?」
「ぜ、全然!全然です!全然行きます!って、良いんですか私で!?行きます行きます!!」
「よし、決まりだね。美味しいところに連れて行ってやろう」
「は、はい!」
嬉しいっ!コナー様は憧れの人だけど、主であるノラ様だって同じだ!まさかノラ様と一緒に外食できるなんて!先ほどまでの緊張が嘘のように消えてしまった。
でもコナー様が仰っていた言葉……なんて言っていたのが良く聞こえなかったな。
……や……や?なんて言ったのだろう。
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