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第87話 番外編 婚約中9
マリー
ゆっくりと、
ゆっくりと才を湯船に浸からせる。
チャプン……
眠っている才を抱っこしたまま、湯に浸かり身体を丁寧に綺麗にしていく。
散々愛した後の才の身体はとてもではないがルースや下女には見せられないし、邪魔されたくないので人払いしてある。
身体の至る所に点々と散らばる花びらのような痣を見ると、自分がどれだけ夢中になっていたかが分かり苦笑してしまう。
ぷくりと腫れた乳首がツンと尖り、濡れて艶めかしく光るのを見るとエロくて、また可愛がってしまいたくなる。
しかしさすがに才の発作も落ち着いたようだ。
才を優しく抱き上げながら髪や顔も湯で慎重に洗う。……こんなこと今までしたことはないがこれは俺だけの特権であり使命だ。
才の閉じられた瞼を親指で拭い、艶やかな漆黒の前髪を整え、おでこにキスをした。
「……髪は伸ばした方が絶対いいな」
才の髪は綺麗だから伸ばせば更に美しくなるだろう。
そんな花嫁の将来の姿を思い浮かべながら、すやすやと眠る可愛い人の頬を撫でた。
風呂から上がり、寝ている才の身体を綺麗にふいてから用意してある服を着せる。自分の身支度を済ませてから再び抱っこして寝室へ。
そこは既にシーツなど全て取り替えられ綺麗に整えられていた。
以前は寝室の至る所に散乱していた本やオブジェは、才がここで暮らすようになってから一掃し、その代わりに毎日生花が飾られ清潔感ある部屋へ変貌している。
窓の外も中も既に薄暗く宵の闇が広がっていた。
白い艶々のシーツに才を横たわせ、その寝顔を隣で堪能する。寝顔はあどけなくまだ幼子のようだから少し混乱してしまう。
この子が先程まであられもない姿を見せていたなんて想像がつかない。副作用からくる発作が原因とはいえ、抱いて抱いてとしがみつかれて理性はどこかへ行ってしまった。
「ん……」
才がピクリと眉間に皺を寄せ小さく伸びをした。寝ぼけているのか、手をパタパタさせて何かを探している素振りをみせる。俺の髪をみつけたようで、それをむんずと掴んで引っ張るから地味に痛い。
「って……こら才」
完全に寝ぼけているようで目は閉じたまま、髪にじゃれて再び眠ってしまった。やれやれ……才の身体を抱き寄せると、無意識に胸の中に入り擦り寄ってくるから可愛らしい。
こんなに可愛いんだな……愛しい人というのは。自分にまさか運命の相手がいたなんて信じられない。信じられないけれど目の前にいるのはまさに運命の相手だ。
これは一生離れられない。
サラサラの髪を撫でてキスをする。
明日は才は朝からお腹が空いているだろうから、ご馳走を用意しよう。沢山食べないと体力がもたないからな。
「才……おやすみ」
そう囁いてから隣で目を閉じた。愛しい人のぬくもりを感じながら……
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