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第4話 恋人
四 恋人
行為が終わった後も、俺は忍を愛撫し続けた。
うなじや背中、肩の所々にキスした。ペニスをそろと引き出すと蕾から粘液が垂れた。
女のように忍は愛液を滴らせたのだ。
体が離れると、お尻を突き出したまま蹲ってしまった。
透明な液体が、忍の会陰から、垂れ下がっている陰茎を伝って布団に落ちた。
鳥居が晩稲(おくて)と言っていたが、可愛い亀頭は露出しており、オナニーの仕方は知っているのだろう。AVを友達と見ているくらいだ。
すでに忍の畳まれた足の下の兄の布団は、忍の出したもので濡れ汚れていた。忍は、早い呼吸をしながら腕の下に顔を埋めている。
俺が大きく突き出されたお尻に唇を付けていく。びくっとお尻を震わせたが、行為の余韻で動けないらしい。俺の唇は周辺からだんだん忍の蕾に近づく。
「あっ!・・・吾郎!いや!」
だが、足を崩して逃げようとした瞬間、俺は忍の腰を捕まえた。膝を突いて腰が高い位置で固定されてしまったので、蕾に俺の顔を近づけやすくなっていた。
まだ半ば開いた蕾に舌を入れた!
「う!・・・ん・・・ば・・・か!」
俺は夢中で蕾に差し込んだ舌を、出来るだけ中に押し込む。忍が蕾を閉めた。俺の舌は中に閉じ込められた!
甘い蜜の味。ペニスだけではなく、舌でも忍を犯しているという感覚に、俺はまた興奮してきた!
舌に力を入れ忍の括約筋に対抗する。圧迫されたまま、出し入れした。
ここだけきれいに洗って来たのか。甘い味がする。普段は排泄するための忍の器官をなめずりまわす異常性が、俺を興奮させいた。
忍は猫の様に弓の様に背骨を内側に逸らせ、首を上げた。何か叫んだ様だった。
俺は口を離し、急いでペニスに被っていたコンドームを引っ張った。
一度萎んでコンドームが根本から緩んでいたのをまた張り切ったので、ちょっと抵抗があったがすぽんと抜けた。精液溜まりを掴んで引っ張ったので、その分の精液が俺のペニスを濡らして、潤滑剤となっていた。
俺は生身のまま忍の蕾に入っていった!
「あ・・・ああーっ!また!」
忍は、再度の挿入を予期していなかっただろう。
まだ完全に男になりきる前なので、自分の生理も、俺の様な成長した男の絶倫さなども知るよしもないだろう。学校で勉強や部活に忙しい少年は、『性生活』という言葉も知らないかも知れない。
しかも、熱い溶岩で出来た陰茎が保護膜も無しに差し込まれたのだ!
忍はまた全身の筋肉を硬直させて身を捩った。だが今度は傷つける心配は無かった。
また二人は激しく腰を動かし始めた。打ちつける淫靡な音に、艶めかしい忍のよがり声!
俺は忍に悦びを与えていることにオスの勝利感を覚えていた。愛するメスである忍を喘がせ、その肉体を貪る悦び!もう叶わないと思っていた恋を勝ち取った欲望の達成感!
そしてこの愛するメスに精を吐き出す充実感!咆吼!
一度出したにも関わらず、また射精感が戻ってきた。だが、最初ほどすぐには来ない。硬直した反り上がった楔は忍の前立腺を責め続けた。
「ひっ・・・あん!・・・ん!・・・」
俺は性欲に支配されて何も考ることは出来なかった。忍もそうだろうか。
今度はコンドームに遮らせず、俺の精液を忍の体内に射出すること、これが俺の今の全てだった。可哀相に俺の様な獣の犠牲になった忍はどんな気持ちだったろう。
射精の一歩手前で動きを止めた。忍は大人しく息を突きながら、俺の次の律動の開始を待つ。それを何度も繰り返した。
俺はそんな時、腕を回して忍のペニスを刺激した。
「ん!・・・いや!・・・」
しかし、肉体の楔を打ち込まれている忍に逃げる術はない。
忍のペニスは、半ば勃起しているが堅くはない。だが桃の様な亀頭の撓みの割れ目からは大量の体液が滴っている。ペニスを搾る様にするとそれが、俺の手の平に溜まった。
それを睡眠灯の光で見ると透明なきらきらした液体に白い筋を引く精液が混ざっていた。
口に含み味わった。忍の体内から分泌されたものに汚いものは無い。
「忍・・・お前の出したもの、おいしいよ」
忍は首を振ると顔をさらに腕の中に隠した。
「馬鹿!・・・吾郎の変態!」
そしてまた俺は律動を始めた。
幾度も我慢に我慢を重ね、俺の陰茎の根本に溜まった熱い粘液が遂に押し出された!
「うおお!しのぶ!俺の忍!愛してるんだ!」
忍がまた叫んだ。そして後ろから俺を受け入れたまま、犬のような格好で、小刻みにお尻を俺の方に突き上げ震えた。
忍の四つんばいの前方に、勢いよく若い精液が飛び散る音がした。
二人の汗と体液で布団はぐっしょりと濡れた。
横になった忍の後ろから手を回し忍の両手を握り、俺は忍の肉体にぴったりとひっついた。忍の髪の匂いを嗅ぎながら、俺は睡魔に襲われた。
忍は反対をむいたまま、疲れ切ってとうに寝入ったようだ。
忍が、俺を起こさない様に、胴に巻き付いた俺の手を解こうとしている。
俺は目を醒ました。もう日が高く、鳥居家の二階のガラス窓から明るく差し込んでいた。
忍は俺が目を醒ましたのに気が付くと、肘を寝床に突いたまま、ちらと俺の顔を見た。そして恥ずかしそうに顔を逸らした。俺は言った。
「おはよう」
忍は小さな声で、
「おはよう」
顔に長い髪が掛かり目が隠れているが、逆光でも頬が紅くなったことが分かった。
「・・・どうしよう・・・兄貴の布団、汚しちゃった・・・」
「・・・近くのランドリーで丸洗い出来るところがあったな。そこに行こう」
忍はうれしそうに顔を上げた。
可愛い。
俺の手を掴んで解いて自由になると、肩を顎の当たりまで持ち上げて艶めかしいポーズをして、
「ちょっとおちんちん、痛い・・・」
「えっ!怪我した?・・・」
忍はふるふると顔を振ると、
「あんなに・・・何回も出したことないもん」
「睾丸が痛いのか・・・?」
「吾郎は風情ないな!タマタマが使いすぎで痛いの!」
「揉んでやるよ・・・優しく」
「馬鹿!もういっぱいやっただろ!」
こんな聞かれたら石を投げられそうな会話をした後、
「俺・・・シャワー入る」
俺は一緒に入ろうと言うべきか迷った。肉体の関係が出来ても、忍が嫌なことはしたくない。
「一人で入れるか?」
「ああ・・・一人で入る」
忍はよろと立つと下に降りていった。その撫で肩の後ろ姿の妖艶なこと。もう蕾はお尻の双丘に隠れて、開いているのか見えなかったが、内股に液体が垂れた筋の跡が残っていた。
今日は日曜日だ。俺はその日も鳥居家に泊まることにした。忍は泊まるんだろ、と言った。
忍の学校は開校記念日で月曜日まで休みということだ。俺も明日は会社を休むことにした。
午前中にコインランドリーで兄の強(つよし)の布団を丸洗いして帰り、ベランダに陰干しして、午後はサミット・ストアに買い物に行った。その夜の食事の材料を買うためだ。
「今夜は何を作ってくれるんだい?」
「・・・吾郎は何が好き?」
「俺は・・・忍が作ってくれるものなら何でもいいよ・・・でも肉系が良いかな」
「そうだよね・・・あんなに野獣みたいになるんだから。肉が食べたいよね」
忍は小憎らしく笑った。ふと真面目な顔をして、
「・・・吾郎。薬局でコンドーム買ってよ」
今の高校生は性教育の時間に習っているのか・・・兄貴の『教育』のお陰か?
俺は神妙に聞いた。
「・・・もう中出しはいや?・・・病気とか心配?」
忍は恥ずかしそうに顔を背けると、
「始めは・・・昨夜みたいに痛いから必要だろ?後からは良いけど・・・」
「二回目はもろでいいの?」
「知らない!」
忍はぷいと後ろを向くと、モールの中をずんずん歩き出した。
俺は薬局の階に行って、『超薄』と『極厚』の二種類のコンドームとジェルを籠に入れ、その上に必要もないレトルト食品などを被せた。
その階には女性の下着売り場があり、俺がレジをすませる間、忍はそこを見ていた。忍も男の子だ。女性の下着に興味があるのだろう。
忍のいるところに行くと、バーゲンのランジェリーをどうどうと見ている。だが、大きめのTシャツとジーパンを着て形の良い素足でサンダルを履いているとどう見ても女の子だ。俺の前では中性的な格好をしているのだ。
忍は薄目で近づいた俺の顔を見ると、
「吾郎。何か買ってよ。『恋人』にプレゼントくらいするべきだろ?」
俺は仰天した。まさか・・・女物の下着を・・・!
こんな下着を着られたら、俺は毎夜、野獣と化してしまうだろう!
俺は、幸せと欲望と恥ずかしさに、真っ赤になった。そして震える手で腰から膝までだけの人形が着たサンプルの下着の包みを取った。真っ赤になりながらも俺は、忍に似合いそうな、そして俺好みの薄い可愛い下着を選んでいた・・・
「一つだけ?」
また忍が鼻にかかった声で言った。
恋人の為に真っ赤になって、下着を選ぶ背の高い俺はかなり目立ったのだろう。暇な店員が笑いながらひそひそやっている。俺は三つ選んだ。
忍は小憎らしくもうれしそうににやにやしている。くそっ!からかっていやがる!
プラスチックの透明な袋に入っている下着を3つも持つ俺を、今度はブラジャー売り場に連れて行く。
俺を後ろに連れて、鼻歌を歌いながら、今度は胸から胴体までの人形が着けたブラジャーを一つ一つ見る。
一番小さなカップのフリルが付いた白いサンプルが出してあったのでそれを取り、胸に着けて、
「吾郎!・・・これ似合う?」
女の子のように可愛らしく身を捩らせ、ブラを胸に押し当てて俺に聞く。俺はコンドームが入った袋を股の前に持って行って盛り上がりを隠した。
売店の女性は笑いを噛み殺しながらレジを打っていた。
俺は紅い顔でクレジットカードを出す。忍ときたら、俺から離れてくっくと笑っている。
食品売り場でカートを押す忍に付いて行く。
忍は、何を作るか考えながらカートにぽんぽんと食材を投げ込む。俺の為に作ってくれるのだ。俺はさっきの恥ずかしさを忘れて幸せな気分に浸っていた。
忍が上目使いで聞いた。
「さっき恥ずかしかった?」
「・・・当たり前だろ」
「怒ってる?」
「・・・今夜あれを着てくれるんだろ?」
忍の顔から笑いが消えた。
「え?冗談だろ!」
ぷいと怒った顔をして、忍はカートを急に左に回した。
からかわれただけか・・・
鳥居家に帰ると食材を冷蔵庫に仕舞い、忍は俺から下着類の袋を取り上げると、
「こんなの兄貴に見つかると大変だから、隠しとく!別に着るつもり無いけどね」
階段を上がる途中で顔を出し、
「何にせよ、ありがと!ダーリン!」
夕飯の支度をする忍の後ろ姿を見ながら、俺は亭主よろしく、キッチンテーブルでテレビを見ながら新聞を読む。
ああ、忍が俺の女房になってくれたら!
俺はこの先どうなるのか不安だった。
十六の少年と愛人関係なんて、世間からは異常と見られるだろう。未成年に性的いたずらをしたと判断されるだろう。
・・・でも昨夜のお互いが味わった悦びは、確かに、愛し合っている者だけが得られる法悦ではなかったか?
忍の作ったステーキと付け合わせは最高だった。こんな美味いものを今まで食べた覚えはない。
「料理うまいんだな?」
「そう?良かった!」
忍は嬉しそうに微笑んだ。
「兄貴の面倒を見なけりゃならないもん!兄貴、全く何も出来ないんだから!」
「・・・鳥居は怒るだろうな・・・」
「ばれるの恐い?」
「・・・ああ。奴は親友だし・・・」
「ボクのこと愛してるんだろ?」
「・・・それは」
「言ったよ!あの時、2回も!俺、聞いたからね!」
「忍・・・はどうなん・・・だ?」
「俺、未成年だよ!そんなこと言わせるの?」
ああ!忍は小悪魔だ!
忍にとっては俺はつかの間のお遊びなのか!
了
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