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「なー天音、放課後空いてんならパン食お、あそこイートインあんだろ」 「お誘いは嬉しいが、今日、美化委員の集会があるんだ」 「さぼれよ、んなもん」 「校内に配置された掃除用具の点検もしないと」 「うっわ、めんどくせぇ、なにそれめんどくせぇ、まじ死ぬ」 帰りのHR、担任村雨が笑顔で話をしているのを尻目に、不満たらたら冬森はクソガキみたいに机をがたがた鳴らして天音を困らせる。 担任を慮って天音は「しー」と唇前に人差し指を立て、冬森をそっと注意する。 なんだそのジェスチャー、萌えか、これが萌えっていうやつか? 「じゃあ、明日に行かないか」 「! ……ん、明日、俺の気が向けば」 明日、早く来やがれ。 帰りのHRが終了し、美化委員集会に向かう天音を見送って、冬森は欠伸を連発しながら恐ろしく軽いスクバを肩に引っ掛けて教室を出た。 休み時間も授業中も隣の天音にちょっかいを出すのに夢中になり、最近居眠りしていないから、眠い。 周囲の笑い声に「クソうるせー」とイライラしながら冬森は階段を下りていく。 そんな褐色生徒の背中にかけられた声。 「ふーゆーもーり♪」 あ。 忘れてた。 『んっんっ冬森ぃ……ッ』 『……もっと舌出せよ、なぁ?』 冬森には中学入学時から親しくしている友達が三人いた。 『あーだりー、もーだりー、うーだりー』 『うるさい、だりーだりー鳴くな、冬森』 『冬森のウチ行こ、放課後だらだらしよ』 『コンビニおやつを買っていきましょう』 春海(はるみ)夏川(なつかわ)秋村(あきむら)、よくつるんでは十代青春ライフをだらだら謳歌し、エスカレーター式で高校に進学してからも行動を共にしていた。 が、清い関係でいられたのは中学時代限定だった。 『ヤリチンのくせ冬森って女子にモテるよねー』 『あ? 何が言いてぇんだよ、夏川?』 『そんなにモテモテならアナルえっちも経験した?』 『経験してねぇよ、お前えろ動画の見過ぎじゃね』 『俺はした♪』 『……うっわ』 『この間合コンの相手だった女子大生とその日に♪』 『ケツハメとかヒくわ』 『やったー、冬森より先にアナルえっち経験しちゃったー、冬森に勝ったー♪』 『は? お前が俺に勝つとか、ねーし?』 『だって俺の方が経験いっこ勝ってるじゃん? 3Pまでドローだったじゃん? 乱交は二人で一緒にクリアしたし? だから勝った♪』 『てめっ……夏川のくせ調子乗んじゃねぇッ、今お前実験台にしてケツハメ経験値稼いでやんよッ、ケツ出せ!!』 『えっ、ちょっ、んなばかなっ、ひょぇぇ……っ』 そんな馬鹿馬鹿しい成り行きで高校一年生だった冬森は夏川と体の関係を持った、持ったら持ったでハマった、のめり込んだ。 ヤリチン男子の守備範囲が女子のみならず同性にまで広がるきっかけになった。 『冬森って俺よりどえろい穴してたんだぁ♪』 『なっっ夏川ぁ……てめっ……俺のケツ傷物にしやがっで……!』 ヤリチン男子くんがビッチ男子ちゃんへ変貌を遂げるきっかけともなった……。

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