13 / 147
3-冬森が泣いちゃうゾ
「……冬森か……?」
冬森も、夏川も、驚いた。
鍵をかけた扉の向こう側から聞こえてきた声は天音以外の何者でもなかった。
「冬森、どうした。何かあったのか?」
天音は掃除用具の点検で校内を見回っていた。
すると自分を呼ぶ声が聞こえ、首を傾げながらも聞き覚えのある声色を頼りに廊下を足早に進んだ。
近づくにつれて声の主が冬森だと気付いた彼は駆け足になってここへ辿り着いた。
「あ、ま、ね」
「やっぱり冬森だな。大丈夫か?」
まさか天音が来てくれるなんて。
でもさ、この状況ってどうよ?
制服ぐちゃぐちゃ、下半身はほぼすっぽんぽん、で、極めつけはバイブいり勃起チンコ。
完全ヒくよな。
ヒくどころじゃねー、さっき夏川が言った通り、軽蔑されんな、こりゃあ。
「地味クンにほんとの冬森見せたげよ?」
夏川は飛び切りの悪戯を思いついた悪ガキみたいに、にーんまり笑う。
猿轡が外れていた冬森は、その気になれば、天音にここから今すぐ立ち去るよう口頭で伝えることができたはずだった。
でも彼はそうしなかった。
この際、いっそのこと、隣の席のクラスメートに自分自身をすべて曝け出してしまおうと。
元えろあほ褐色男子は褐色腹を据えることにした。
ともだちにシェアしよう!