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天音、まだ俺を見てくんねー。 ごめんなー、天音。 こんなくそあほが隣で、ごめんなー。 早く席替えするよう、俺、村雨っちに言っとくわ。 「席替え、この間したばかりだからね、次はまだ先かな」 へぼ教師、使えねー。 「もしかして天音君に失恋した?」 「うるせー」 掃除時間中、教室の隅っこで村雨先生に笑われて冬森はフンと顔を逸らした。 超テキトーに動かしていたモップをロッカーに戻し、席に座り、机に突っ伏す。 窓側に顔を傾けて。 ガタッ あ。 天音、戻ってきた。 ごめんなー、席替え、まだ先だって、まだしばらくこのままなんだと。 この状況がそんなムリなら、俺、ガッコ―休むから。 別に勉強好きじゃねーし、だりーし、眠ぃし。 中退したっていーし、ウチの店手伝えばいーし、……、……。 zzzzzzz………… 隣の冬森がさっきからぴくりとも動かない。 帰りのHR、明日から始まる中間テストの注意事項について村雨がのほほん話している間、天音はうつ伏せている隣人褐色男子生徒をちらりと見やった。 ……動いた。 カーテンが秋風とふわふわ戯れる傍ら、ぴくりと肩を揺らした、居眠り中の冬森。 うつ伏せの姿勢だと長袖シャツしか着ていない彼の肩甲骨がいつになく際立って見えた。 襟から覗くうなじ。 腰辺りの褐色生肌とボクサーパンツがシャツとズボンの狭間からチラ見えしている。 天音は居眠り冬森から視線を逸らした。 HRが終了してクラスメートが続々と帰り出しても目覚める気配のない隣人に、声をかけるべきか逡巡し、遠慮がちに再び視線をやってみた。 冬森、何か握っているのか……? 「ん」 また冬森の肩がぴくりと揺れたかと思うと、半開きの唇から微かな声が洩れ、天音は警戒心旺盛な野良猫さながらに過剰にびくっとした。 もう起きるだろう、そう判断し、彼は足早に教室を後にした。

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