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「射精」という性的ワードにつられて脳裏に鮮やかに浮かび上がった冬森のエロ姿に、どうしてあの時自分を呼んだのか、わだかまっていた疑問は意識外へポイッと放り出されてしまって。 喉が渇く。 あつい。 密かに焦る天音は気持ちを落ち着かせようと床から窓の外へ視線を変えた。 「あ」 今夜は月食だった。 月が欠け始めている。 「な、なんだよ、天音?」 「月食だ」 「月食……? あー……なんかヤフーニュースに出てたな」 気持ちを落ち着かせようと、立ち上がった天音は窓辺へ移動して光り瞬く街並みの遥か上、ゆっくり浸食されていく月に集中しようとしたのだが。 ……よかったー、ヒかれるかと思った、でも天音いつも通りだわ。 どうして自分自身に拒まれたことを天音が重要視していたのか、そんな肝心なことをスルーして、一安心してしまった冬森は。 なんか寒ぃと、捏ね捏ねしていた天音のセーターをばばばっと素早く着込んで、窓辺に立つ天音の隣に立った。 「あ、マジだ、すげ」 自分のセーターを着用してすぐ隣に立った、数センチ離れたところにある冬森の横顔に天音の視線は否応なしに束縛された。 「月食、ぱね」 キスをした。 どうして了解もとらずにしてしまったのか。 軽犯罪域だ。 恋人がいるのに。 でも、そう、今、触れるくらい、なら。 「でもなんかグロい色してんのな」 「冬森」 「血っぽくね?」 「触ってもいいか」 あほ冬森はきょっとーーーーーん、した。

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