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「ん……ッふ……ぁ」
きもちいー。
天音、もっと、もっと。
もっと濡らして。
俺のことぐちゃぐちゃにしろ。
「ッ……ッ、ッ」
フロア違いの一年生教室の隅っこで冬森と天音は互いの唇を濡らし合うのに夢中になった。
まだ校長の話が続いている中、明るい校舎の片隅で誰に知られることなく。
「んッ」
冬森の背中が壁にぶつかった。
秋の緩やかな陽射しをグラウンドで一身に浴びていた褐色肌からは日だまりの匂いがした。
その肌の質感をもっと知りたくて、もっと触れてみたくて。
天音は半袖シャツの内側に潜らせた片手で彼の背中を撫で上げた。
「ッッ」
些細な愛撫に冬森はビクリと跳ねた。
掌にじかに伝わってきた振動。
服越しにも感じるクラスメートのじんわりした熱。
「冬森……」
繋がっていた唇を一瞬だけ解いて名前を呼べば冬森は上目遣いに天音を見つめて。
またすぐ自ら繋がってきた。
欲張りに欲してきた。
「ンッ……ン……ッ……」
唇内を唾液と舌でいっぱいにして、切なげに呻きながら、冬森は天音に抱きついた。
ジャージをぎゅうっと掴んでたくさんの皺を刻む。
何度も角度を変えては貪るみたいに求め合って……。
<それでは校長先生のお話を終わります……>
閉会式進行のアナウンスが聞こえて二人ははたと我に返った。
<次は理事長のお話です……>
「ぶっ」
思わず吹き出した冬森。
失笑する天音。
二人を繋ぐ濡れた糸。
「……天音、お前さー」
「うん」
「俺と夏川、ガチで付き合ってるって思ってたのかよ?」
「ああ」
「そんで、違うってわかって、俺にぶちゅってしたのかよ?」
「……」
「なんつーイイコちゃん……でも、誰か他の奴と俺が付き合ってたら、お前、どしたの?」
冬森に問いかけられた天音はその場でフリーズしかけた。
ぷ。
なんだその顔。
ばーか。
かわいすぎんだろーが。
「天音ー」
「うん」
「俺、お前のこと好きだわ」
「……俺も」
「ん? なになに? なーに?」
夕焼けの教室で寝ていた冬森にキスしたことは秘密にしておこう。
なんだかずっとこの先いろいろ言われそうだから。
「冬森のこと愛してる」
まさかの「愛してる」発言。
んな言葉、これまで一回も言われたことがなかった高校生の冬森は、天音に抱きついたまま涼しげな一重まなこをまじまじ凝視した。
「もっかい、言え」
「俺は冬森を愛してる」
なんだこいつ。
なんなんだよ。
「もっかい」
「……あのな」
とりあえず二人は理事長の話が終わるまでもっかいキスしておくことにした。
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