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14-冬森が天音がいちゃつくゾ
開かれた窓から爽やかな秋風がそよそよ訪れる午前中の教室。
古典の授業、レ点といった返り点であっちに行ったりこっちに行ったりな漢文を懸命に黙読中の生徒達。
速やかに読み解いた天音はちらりと隣のクラスメートを見た。
隣人は見事なまでの居眠りに耽り中であった。
無防備な寝顔を天音sideに曝して寝息まで立てていた。
「んが……」
この間まで長袖シャツ一枚だったが、今日はブレザーを羽織っている、ボタンはかけずに前全開、ゆるゆるネクタイ。
なんとも冬森らしい。
いつにもまして堂に入った居眠りっぷりに失笑するでもなく天音は意味深に冬森を見つめた。
文化祭のあった金曜日から、昨日の日曜日まで、冬森は天音の部屋にずっといた。
『あっ、あ゛っ、ぁ゛、天音ぇ……!』
食事を疎かに眠るのも二の次にして、何回も、何回も。
天音は冬森にのめり込んだ。
今何時なのか、まだ土曜なのか、もう日曜なのか、そんな判断もできなくなるくらい夢中になった。
疲れさせてしまったな。
一限目の授業が終わって休み時間になっても冬森は居眠りしっぱなし、風邪を引いてはいけないと、天音が窓を閉めようと立ち上がりかけた矢先に。
「冬森ー♪」
夏川がやってきた。
ベストにブレザーを着込んだ他クラスの男子生徒は寝ている冬森に平然と大声で話しかけた。
「土日は何してたの、冬森? ねーねー何してたの?」
少し呆気にとられている天音の視線の先で、夏川は、寝ている冬森の背中に抱きついた。
まるで休日にちっちゃなこどもがパパにじゃれついているような。
「んが……ころすぞ、夏川ぁ……」
目を閉じたまま不機嫌そうに唸る冬森に臆することなく、その背中にごろごろごろごろ。
唸っていたはずの冬森はもう居眠りを再開していた。
「おっぱいもんじゃおー」
夏川に、おっぱ……胸をもみもみされても寝続けている、どう見てもあほにしか見えない。
唐突に夏川がまた一段とでかい声を。
「あ! キスマだーーー!!」
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