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あいつって一人暮らしだから風邪引いても看てやる家族がいねーんだよな。
一応、天音、俺の嫁だし。
こりゃもー俺が世話してあげなきゃだろ。
てなわけで消しゴムに地図が描かれている学校近くのパン屋を冬森は訪れた。
しかし、自分が好きなパンをひょいひょいトレイに乗せていた彼は、はたと気が付くのだ。
病人にマヨ系調理パンはヘビーか?
なんか消化のいいモン食わせた方がいーんだっけ?
おかゆとか?
おかゆってどーやって作んの?
米にお湯ぶっかければいーのか?
飲食店経営の親を持つ息子とは思えない発想に至った冬森は、とりあえず自分が食べたいパンだけ購入した。
袋をガサゴソ言わせて天音宅へ徒歩で向かいつつマナー違反ながらスマホ。
えーどう調べっかな、病人+食べ物、だと、んー? 別に世界の病人食とかいーわ、日本限定で知りてーの、クックパ●ドとか本格的過ぎるわ、却下。
風邪+食事、だとどーよ、えーっと、ハチミツ?
ハチミツとか……買っても完全残るだろ、日頃そんな口にしねーよな、大根とか買ったことねーよ、相場わかんねーよ。
「うわッ」
うそだろ、電柱にぶつかった、くそださ、ウケる。
そか、つまり「食事」なんてお上品なワード使ったから本格的なのばっかHITしたんだな、よし、風邪+飯、だとどーだ。
お。
「一人暮らしで風邪」か、うんうん、へー、スープとかホットミルクとか、体のあったまるもんかー、そんでリンゴジュースもいーのか、バナナもいーんだな、へー、ふーん、なるほど。
冬森は天音と寄ったことのあるスーパーに行くと、それらしき商品をカゴにぽいぽい入れ、最後にマスクも放り込んで今月のお小遣いを使い果たして。
天音が一人で住むアパートへ向かった。
「……ふゆもり?」
「よー天音」
「……伝染るから帰った方がいい」
「マスクしてっから大丈ー夫」
「……」
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