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「な、なっちゃぁん」 「……むり……このひと……こわい……」 純真無垢なパーカー男子なる亜砂と櫻井には止められなかった。 いかに愛しの飼い主……じゃない、愛しのセンパイのお願いとは言え。 モップを肩に担いで、廊下奥の暗がりから、ぬーーーーー……っと、やってきた学校の怪人じみた長身センパイを止めることは、とてもじゃないが無理な話だった。 「何してる、夏川」 天音が2D教室に戻ってきた。 その後を困り顔の亜砂と櫻井がわんにゃん続いた。 冬森のお膝に座った夏川はドス黒笑顔で天音を見据える。 「ちょっとー……あさちゃんさくちゃん怯えてんじゃん、まさかそのモップで脅したとか? 童貞クン?」 「違う、このモップは処分する分だ、これから物置小屋に持っていく」 「んな話どーでもよすぎぃ」 「な、なっちゃん、ごめん、なさい」 「……止めらんなかった」 「ん、いーの。あさちゃんさくちゃんは悪くないの。悪いのはその童貞クンだからねー」 聞き慣れた夏川の悪口は聞き流し、半分だけ明かりが点された教室の壁にモップを立てかけ、天音は窓際最後尾の席へ迷わず進んだ。 明らかに様子がおかしい冬森、そんな彼のお膝から退こうとしない夏川に言う。 「冬森から離れてくれ」 「やーだ」 「夏川」 「力づくで退かしてみろよ」 さっきから俯きっぱなしで一言も発しようとしない冬森が気になる天音、どうしようか、考えて、い、た、ら、 どんっっっ 「天音ぇ」 自分のお膝に座っていた夏川を突き飛ばした冬森は迷うことなく天音に抱きつくなり。 ぶっちゅーーーー 猛烈キスに至った。 「げーーーーーーッ」 「わっ」 「きゃっ」 夏川もわんにゃん男子も驚いたが、一番ショックを受けたのは天音だった。 人前で突然のキス、すんなり受け入れられずに我が身から冬森をべりっと引き剥がし、その熱さに……また唖然とした。 「どうしてこんなに熱いんだ、冬森」 とろーんな双眸で、173センチの自分より上背ある182センチの天音に抱きついたまま、火照り冬森は告げた。 「ぁぅぅ……俺ぇ……夏川に媚薬チョコ食わされ、た……」

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