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お客様用の布団を引っ張り出して冬森の部屋に敷いてくれたのは胡太だった。
パジャマ代わりの服も自分のお古を差し出して、お風呂上がりのぽかぽか天音に無駄に寄り添い、純和風まなこを興味津々に覗き込んでは。
「近ぇんだよ」
冬森に蹴っ飛ばされる始末。
「よーし、じゃあ夜も深まったところで女子トークならぬ男子トーク始めちゃう?」
「始まらねーよ、一生な」
部屋に長居しようとする胡太を全力で廊下に押しやろうとする冬森、周太はドア越しに繁々と様子を観察している。
「一生入ってくんなッ」
冬森が部屋から兄を締め出すことに成功すると、布団上にすでに落ち着いていた天音は言う。
「仲がいいんだな」
「……今のどこにそんな要素あった?」
「俺は一人っ子だから。ああいう風に言い合える家族がいるのは楽しそうだ。毎日だと疲れそうだが」
自分の制服をきちんと畳んでいる天音の背中に冬森は背中を預けた。
「親、シンガポールにいっぱなしか?」
「たまに帰ってくる」
「帰ってきたら一緒に飯行ったりとか?」
「外食もするが母が作ってくれる」
天音の背中、あったけー。
「……んが」
「冬森、俺の背中で寝るな」
日付が変わったばかりの深夜。
明かりの消された部屋、馴染みのない床上で布団に包まって目を閉じていた天音に、否応なしに伝わる気配。
がさごそ。
「……冬森」
ベッドで眠っていた冬森が自分のすぐ背後に潜り込んできた。
しっかり抱きついてくると、腹の辺りで両手を重ね合わせ、がっちりホールド。
二人分の温もりに布団が心地よく熱せられていく。
「あったけー」
「正直、寝づらい」
「寝なくていーし、今からするし」
「あのな」
ぼそぼそと小声で交わされる会話。
抑えられがちな天音の低音ボイスはいつにもまして魅力が増し、鼓膜をこちょこちょくすぐられて、冬森は抱擁により力を込めた。
「ここ、俺んち、だから俺のいうコト聞け」
「ひどい言い草だ」
顔が見えない代わりに視界に広がる天音のうなじ。
薄闇の中で上品にほの白く艶めいて見えた。
「胡太さんや周太君がいるだろう」
いるどころか、あいつら、絶対聞き耳立ててるに違いねー。
「関係ねーよ」
「……あのな」
「今日、ちゅーすらしてねーぞ」
「……そんな一日はこれからいくらあったって構わないと思う、冬森」
「いーやーだ」
「……」
「ガマンすんの、俺はムリ……そんなに乗り気じゃねーんなら、お前、動かなくていーよ」
……あれは重いから苦手なんだ、冬森。
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