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図書館を出、傘を持ってきていないという冬森と相合傘した天音は、一番近くにあったコンビニに入った。 肉まんを二つ、ホットコーヒーを一つ買ってガラス張りのイートインスペース、二人掛けテーブルに冬森と向かい合って座った。 「来るとき、雨、降ってなかったか?」 「友達の傘にいれてもらった」 「そういえば友達と発表の準備をするんじゃなかったのか」 「あ。盗み聞きされた」 「すまない」 「別に。どーせ春海か秋村がまとめてくれるし」 あったかい肉まんをもそもそ食べ始めた冬森は聞かれてもいないのに自己紹介を始めた。 「俺、六年。冬森。飼育委員」 「俺は美化委員だよ。高三だ。何の動物の世話をしてるんだろう?」 「金魚」 「……金魚か」 「肉まん、ンまい、どーも」 俺は初対面の小学生と何をしているんだろう、もしくは、面倒くさい、などと思うでもなく。 天音は小さな褐色男子と自然に会話を交わしていた。 「天音、変わってるって、人に言われね?」 「さぁ。どうだろう」 「なー天音、この辺に住んでんの」 「バスで三十分くらいの場所に住んでる」 「ケータイは? LINEは?」 「携帯は持っていない」 「え゛っっ」 天音の発言に驚いた後、冬森は舌打ちした。 「ちっ。ありえねー」 その時だった、いきなりガラスがどんどん叩かれて、驚いて横を見れば冬森の友達の一人がへばりついており、後ろの二人が必死に引き剥がそうとしていた。 「ひどい、冬森、勝手にいなくなるなんて!」 店内を駆け足でやってきた彼にガクガク揺さぶられて冬森は平然と「かくれんぼだろ、隠れてなんぼだろ」と抜かした。 「図書館出ちゃうなんてルール違反だもん!」 「違います、かくれんぼがどうとかの話じゃないです、冬森」 「傘だってあったから図書館の中探したんだぞ?」 天音は目を見張らせた。 冬森は特に動じる様子でもなかったが、友達に「バカな冬森のことだから雨降ってても傘のこと忘れて外に出たのかも、って結論になった」と言われて「うるせー春海」としかめっ面になって言い返していた。 「知り合いの人といっしょのところ、悪いですけど。早く戻って発表まとめましょう」 「来なかったら村雨センセーに言うからな。そんでまた居残り反省文の刑にしてやる」 「冬森のばかぁ~」 三人の友達は冬森に図書館に戻るよう念を押してコンビニを出て行った。 肉まんを食べ終えた冬森はガタガタとイスから立ち上がった。 向かい側で不思議そうにしていた天音の真横へやってくると黒パーカーをぎゅっとしてくる。 「明日も来いよな」 「え?」 「図書館、そだな、今何時、あ、じゃあ三時半」 「冬森?」 つい名前を呼んだ天音に、冬森は、小学生にしてはどえらく生意気そうなふてぶてしい目をまぁるくし、そして、笑った。 「俺、お前のことナンパしたんだぞ、天音」

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