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「やっぱ泳がねぇの?」 「ああ」 「んー。わかった」 一休みしてまた海に向かった冬森を天音はビーチパラソルの下から見送った。 褐色の背中がいつになく瑞々しく見える。 173センチで華奢じゃない褐色男子は肉食ネコ科さながらのしなやかさがあって、色気があるのも事実で、彼を目で追う女子もちらほらいた。 「冬森の背中せくしー!」 「暑ぃんだよ、夏川」 日差しを浴びて艶やかに光る背中に夏川が堂々と飛びついている。 夏になると解放感が増すと言うが、やっぱり人に寄る、俺はああはなれない……と、天音は思う。 みんな海に戻り、一人残った眼鏡男子は気を取り直して読書を再開させようとした。 「すみませーん」 ふと後ろから声をかけられた。 振り返れば年上と思しき水着女子が複数、ワンピース姿の子もいた。 写真を撮ってほしいのかと腰を浮かしかけた天音だが、実際は、違った。 眼鏡男子が冬森らと一緒にいるところを見かけていた彼女達は、夕方、いっしょに花火でもしないかとお誘いにきたのだ。 どうしたものか。 春海と秋村は付き合っているらしいし、俺と冬森も付き合っているし、夏川は……冬森にまだ夢中であることは否応なしにわかる。 相手からすると、不毛、というやつなのでは? 真後ろにしゃがみ込んでニコニコ笑いかけてくる積極的な一人に、迷う天音、返事を言いかねていたら。 「天音」 いつの間に……全身海水で濡れそぼった冬森がビーチパラソル横にしれっと立っていた。 直射日光の元、濡れた髪をぐっとかき上げて海水を切った褐色男子は、笑う。 「何、勝手に浮気してんだよ、えろ眼鏡?」

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