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夕方になってぽつぽつと減り始めた海水浴客。
「冬森もう帰っちゃうの!?」
「お前らは花火していけよ、俺は天音と帰るわ」
「ん。今日楽しかったな」
「じゃあ気を付けて、冬森、天音」
「やだぁっ冬森ぃぃっ……こンの童貞眼鏡ッ、閻魔様に呪われろーーーー!」
茜色を反射して日中よりも穏やかにキラキラ瞬く海を背景に、恥ずかしげもなく喚く夏川、そんな友達を押さえ込む春海と秋村。
すでに海パンから普段着に着替えていた冬森は手を振って波音の響く海水浴場を後にした。
「よかったのか、冬森」
他にもバスを待つ人がいる海際の停留所、隣に並んだ天音に問われて冬森は答える。
「別に。お前と二人になりてーし」
「……」
「ッ……のろわれろぉ……ぉ……ッ……」
「あいつ、まだ叫んでんのか、夏川」
手すりから身を乗り出してビーチを窺う冬森から海の残り香が薫って。
昼よりも眩しそうにそっと目を細めた天音なのだった。
「結局、夏川も帰ったな」
夕暮れのビーチ、向かい合ってド派手にナイアガラ花火を……ではなく、線香花火をパチパチと鳴らし合う春海と秋村。
少し離れたところでは男女のグループが缶ビール片手にナイアガラ花火をどんちゃん楽しんでいたり、犬の散歩をしている人もいた。
「こうして変わっていくんですね」
ちょっと日焼けした秋村はしみじみとした声色で言う。
「僕達の名前にある四季みたいに。僕達の関係も移ろっていくんです」
「そうだな。あーあ、明日からは勉強漬けだ。でも美術館の企画展にだけは行きたい」
「ちなみに僕と春海は、いつか同棲というステップに移ろっていくはずです」
「勝手に言ってろ」
まぁそれも悪くないかと思いつつ口では素っ気ない春海、秋村が手にしていた線香花火の火種を自分の線香花火にジュッと吸収してやるのだった。
「ばーか、ばーか……冬森のばーか……呪われろッ、天音ッ」
一人とぼとぼ帰宅していた夏川。
すると。
「……なっちゃん、こんばんは」
「なっちゃーん! 花火しよ!!」
自宅前、花火の詰め合わせが覗くコンビニ袋を手にした櫻井と亜砂のわんにゃん男子が夏川のことを待っていた。
ばさばさポニーテールの夏川は蚊に吸血されまくった二人の元へぴょんぴょん駆けていく……。
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