89 / 147
25-2
『おー、天音サンじゃないですか、どーもよろしく』
『また隣同士で、窓際の一番後ろだなんて……すごい偶然だ』
三年生になって初めて行われたくじ引き席替えでまたしても隣同士、しかも窓際最後尾という、前回と同じ位置になった二人。
『なぁ、村雨っち、わかってるよな?』
『そうだねぇ、でもタダじゃあなぁ、何か見返りでももらわないと』
『見返りとかふざけんな、今まで十分好きにハメさせてやっただろーが、もう一生金輪際目ぇ合わせねぇからな』
『先生、そんなの耐えられません』
そんなわけでやっぱりこっそり今回も不正が横行したわけで。
「今日、天音んち行ってい?」
今現在、席をくっつけて並んで座っていたのだが、早速冬森の集中力が乱れ始めた。
「冬森。集中しないと」
「泊まってい?」
「家に来るのも泊まるのもテストが終わるまで駄目だ」
「な゛ッッ?」
冬森のショックぶりに天音は苦笑した。
「来週末まで。たったそれだけの期間だ」
「長ぇよ……長過ぎ……死ぬ……」
机にうつ伏せてブチブチと文句を垂れていた冬森だったが。
急に身を起こすと。
「ヨイショ」
お隣に座っていた天音のお膝に移動してきた。
しかも机に背を向けて天音と向かい合う格好に。
「……冬森、この姿勢で勉強ができるのか」
「もう全部解いたぞ」
「え?」
確かに、天音が自分の勉強に集中していた間に冬森は問題集を終えていた。
「それなら答え合わせしないと」
「後でいい」
「冬森」
「にゃー」
「あのな、にゃー、じゃない、重たいんだ」
天音は182センチ、冬森は173センチ、でも体重は適度に肉付きのいい褐色男子の方が勝っている。
「天音ー」
教室で二人きりになって漏れなく発情したえろあほ男子はさらに擦り寄ってレンズ下の純和風まなこを覗き込んできた。
『お守りだし』
俺が地図を書き込んだ消しゴムを意味もなく握り締めているのを何度か見かけたことはあった。
まさか<お守り>として扱ってくれていたなんて。
ともだちにシェアしよう!