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28-パラレル番外編-家族になったゾ

■特殊設定注意/冬森と天音がこどもを授かっています 「えーと、天音? お前って転校生?」 「転校生じゃない、ここには高等部から通ってる」 冬森と天音が高校時代の席替えで席が隣り合ってX年が経過した。 「おーす、冬森」 「冬森ぃ♪」 「どうぞ、手土産です」 四季ごとに彩りの変わる雑木林近くにひっそり佇む平屋建ての古民家。 あちこち手は入れているが昔風の趣を残した、懐かしさ覚える温もりある住居。 「おーう、春海、秋村、ひさびさ」 昼はほぼ開放されている玄関に立っていた春夏秋に、奥からぺたぺたやってきた冬森、十代と変わらない笑みを浮かべて出迎えた。 その両手には。 「あー!ハルハル!!」 「あきむらくん、こんにちはです」 左手を握るは冬森そっくりな。 右手を握るは天音そっくりな。 「つぅかなんでみんな俺を無視するわけ!!」 障子が全開にされて日当たりのいい板間。 夏川にぎゅうぎゅうされて、冬森にそっくりな(ゆき)、ジタバタしている。 見るからにヤンチャそうな褐色肌の男の子だ。 現在、保護猫カフェでスタッフとして働いている夏川に全力で抱きしめられて「やー!」とジタバタを止めない。 「すーはーすーはー! 冬森とおんなじ匂いする!」 「やめてやれよ、夏川、この変態」 美術館の運営スタッフに就いている春海は嫌がる幸にスリスリをやめない夏川に呆れている。 「ハルハルぅ、助けてぇ」 「あきむらくん、わからないです、なんてよむですか」 ぽかぽか縁側、薬剤師として大学病院に勤務している秋村に絵本を広げて見せている、天音にそっくりな(うた)。 昼下がりの陽射しにめがねをきらきらさせながら質問していた。 「青い鳥、メーテルリンクですね」 「めぅてぅりんく」 「えろあほだった冬森が今じゃオカンか」 「しっかりオカンやってんぜぇ」 「ドヤ顔するな。いきなり年賀状で幸と唄の写真見せられて、なんで冬森も天音も幼児化してんだって、あん時はびびったな」 「すーはーすーはー!」 我が子をすーはーし続けている夏川を冬森はポカリとゲンコツした。 「いだいッ!」 「うわーんっ! おとぉさぁんっ!」 解けた抱擁から飛び出した幸、冬森の腕の中に逃げ込んだ。 「おーよしよし、ど変態の人怖かったな」 「天音は奥ですか?」 「いつもの〆切地獄で缶詰か」 「んー! おかぁさん、さばかーん!」 天音は現在ライトノベル作家として活動している。 コミカライズ、アニメ化されるほどの人気があり、この家に住む住人が開かずの間と呼んでいる奥の部屋で執筆活動にコツコツ励む日々を送っていた。 「冬森ぃ♪ すーはーすーはー!」 「俺に抱きつくな、すーはーすんな、夏川ぁ」 日暮れが近づき、街へ帰る春夏秋を見送るため、冬森は幸と唄を連れて駅までついていくことにした。 「天音ー、駅行って買いモンして帰ってくっから!」 開かずの間にそう一声かけて。 「じゃあ、またな」 「今度うちのお店においでねニャン!」 「天音にもよろしくです」 冬森はプラットホームで友達が乗車した電車を見送り、駅を出、晩御飯の買い物をするため商店街に立ち寄った。 何故か絵本を持ったままの唄は大人しくしているが、ヤンチャな幸はそうもいかない。 「あ! にゃんこー!」 「ごーら、かわいーけど触んな、服に毛がついたら天音のクシャミが止まんなくなるだろーが」 「まま、きょぉ、ごはん、なんですか」 「あー、何にすっか、唄、何か食いたいモンある?」 「さばかーん!」 「うるせーぞ、幸、ほんとに毎日サバ缶だけ食わすぞ」 出来立てコロッケなどのお惣菜がふんわり香る夕暮れの商店街をあっち行ったりこっち行ったりな親子。 常夜灯に次から次に明かりが点り、空には一番星、夜の移ろいがおもむろに始まる時間帯。 「あー!」 また大声を上げた幸の頭をコツンした冬森。 「うるせ、十秒でもいーから静かにしてみ、やが、れ……」 幸が頻りに指差す先を何気なく見てみれば。 お買い物中のレディー、制服を着た下校途中の少年少女、出前帰りのチャリおじさん、商店街をちらほら行き交う通行人の向こうに。 宵風にそよぐ黒髪、黒縁眼鏡、長身細身に纏うは上下どちらも黒っぽい服。 「ぱぱっ」 冬森の手をぎゅっと握っていたはずの唄、開かずの間から解放されて数週間ぶりに家の外へ出てきた天音の元へ子犬のようにぱたぱた駆け寄った。 冬森も幸を伴い、僅かに遅れて天音の真正面へ。 唄を抱っこした天音に苦笑してみせた。 「原稿、終わったのかよ?」 「一通り。担当の人に送信した」 商店街の真ん中で冬森は大袈裟に深々と一礼した。 「どーもお疲れ様でした」 「冬森こそ、買い物お疲れ様」 「あー? 俺は別に……飯、どーする、何か食いたいモンあるか?」 「さばかーん!」 「角のどんぶり屋さんで食べて帰ろう」 「やったー! おかぁさんとかつどーん!」 「ぱぱ、ごほん、よんでくださいです」 「家に帰ったらいっしょに読もう、唄」 そう。 冬森だけじゃなく、天音も、どちらもこどもを授かった。 冬森にそっくりな幸は天音が。 天音にそっくりな唄は冬森が。 『ほら、幸の寝顔、冬森とそっくりだ』 『唄だって……あ、笑ったら、お前にすげー似てる』

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