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昼休みになった。
視聴覚室の確保された暗闇の片隅で冬森は天音にまた貫かれていた。
ひんやり冷えた室内。
肌と肌のぶつかり合う音。
寒くて一日ずっとマフラーをし続けている冬森を四つん這いにし、背後から攻める、天音の低い呼吸音。
なんだろ。
こんなの、お前らしくないってゆーか。
あんまよくねぇ。
誰とシたって簡単に気持ちよくなっていた、あの元ヤリチンくんビッチちゃん男子だったえろあほ冬森が、大大大好きなセックスで快感を見出せずにいる。
反対に天音はそんな冬森を突き揺さぶるのに必死になっている。
腹へった。
天音の分もパン買ってきたんだけどな。
もーすぐ昼休み終わんじゃねぇの。
もう食えねーな。
「冬森……ッ」
真っ暗でバックだし天音の顔がぜんっぜんわかんねぇ。
お前、今、どんな顔してんだよ……?
その日の夜。
天音宅に何の連絡も寄越さずにやってきた人物がいた。
「よー天音」
冬森だった。
制服から黒ずくめの普段着に着替えて、夕食の準備もせずにずっとぼんやりしていた天音は、数時間前に別れたばかりの褐色男子の来訪にその純和風まなこを静かに瞬かせた。
「……冬森……」
天音は玄関で冬森をぎゅっと抱きしめた。
冬森はそんな天音の背中を両手でバシバシ叩いてやり、笑った。
「なーパン食おーぜ」
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