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昼休みに食べるはずだったパンを夜ごはんにして、去年よりも早めに出したコタツで二人して言葉少な目にモグモグした。 冬森は制服のままだった。 天音と別れ、帰宅し、今日一日様子が変だった眼鏡男子のことを思うと何にも手につかなくて、着替えすらさぼって、ちょっかいを出してきた弟の周太を蹴っ飛ばしたりどついたりして。 二時間近く迷った末に天音に会いにいこうと決め、こうしてやってきた。 「ごめん、冬森」 タルタル系のパンをぱくついていた冬森は向かい側でそれまで黙々と食事していた天音を見た。 「お前、昨日も謝ってたな」 学校では強張っていた表情がちょっとだけ和らいでいるのを確認し、冬森は、天音の異変に不安が募って同じく強張っていた心をちょっとだけ柔らかくさせた。 「どーした、天音?」 「……些細なことなんだ、冬森」 言ったところでどうにもならないし。 俺の独りよがりみたいなものなんだ。 「独りよがり? 何が独りよがりなんだよ?」 冬森に聞き返された天音は向かい側に座る彼から視線を逸らすと、まっくろ髪をさらりと滴らせ、さり気なく表情を隠して胸の内を素直に告白した。 「冬森の<初めて>が欲しかった」 は? 「誰よりも先に、一番に、冬森に触れたかった、そんなことを……最近ずっと考えていた」 なんだそりゃあ。 天音、天音ってば、お前、何時代の人間だよ、古風過ぎんだろ、このバカ、バカタレ。 どうしよ。 たまんねぇ。 「お前、愛し過ぎてたまんねぇんだけど」 「え?」 居ても立ってもいられなくなった冬森は向かい側に座る天音の真正面に移動した。 つまりコタツに入っていた眼鏡男子を跨いで座って間近に向かい合った。 「俺こそごめんな」 体の奥底から天音への愛しさが滾々と湧き出てくるようで。 ただ触れ合ってるだけじゃ物足りなくて、しがみついて、仄かに赤面していた天音をぎゅっと抱きしめた。 「節操無しのえろあほで、ごめん。でもな。今はお前のことしか頭にねぇから。他は考えらんねぇから」 「……あったかいな、冬森」 「ん。そだな。お前もあったかい。きもちい」 「今日、泊まっていくか?」 「泊まる」 天音の長い指で髪を梳かれて冬森は溶けそうになった。 優しい丁寧な愛撫に心がとろとろになりそうだった。 「はぁ……溶けそ」 「俺もだ」 食べかけのパンをコタツ机に放置して溶け合うみたいに互いを抱きしめ合った。 「眠ぃ」 「寝てもいいよ。重たいけど」 「腹へった」 「どっちなんだ」 「寝てる俺に食わせろ、天音」 天音は思わず小さく笑った。 肌身伝いに感じる微かな振動が心地よくて、ずっと髪を梳かれている冬森は目を閉じた。 「ごめんな、天音」 あークソ。 天音のこと好き過ぎてツライ。

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