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冬森はコタツでぬくぬくしつつピザのチラシを眺めていた。
背もたれ代用になっている天音はさもおばかそうなカラーに染めらた髪をタオルドライしてやっていた。
「お詫びにピザおごってやっから、クソコタの金で」
「勝手に使っていいのか」
「いーのいーの、お、万札あんじゃん、トッピングしまくろ」
兄の胡太に対し金銭的横暴を働く冬森に微苦笑していた天音は、やや上体を捻って、背後の収納ラックに片づけていたソレを取り出した。
「へっ」
後ろからおもむろに首にかけられたソレに冬森は目を見張らせる。
実はサプライズで用意されていたネックレスのプレゼントだとか、そんなおしゃれなモノじゃあない、動けばカサカサ音が鳴る、折り紙で作られた輪飾りだった。
「お前コレとってたのかよ?」
クリスマス、冬森が冗談で言っていたCM並みの演出を天音は頑張って遣って退けた。
ただ、ツリーはミニサイズをディスカウントストアで購入、チキンとホールケーキは予約で卒がなく用意できたものの、折り紙の輪飾りに意外と手間取った。
「結構めんどかったよな、折り紙もセロテープもすげぇ使ったし。いつも通りでよかったのによ」
二人で完成させた、色とりどりの折り紙で出来上がった輪飾りを冬森は掌に掬い上げる。
「来年のクリスマスはいっしょ過ごせねぇな」
肩越しに振り返って。
眼鏡をかけた最愛なるクラスメートにちょっと照れくさそうに笑いかけた。
「冬休みの思い出ちゃんとあったな」
こどもじみた夢を詰め込んだみたいなクリスマス、そして。
「お前の両親に一番大事な奴って紹介してもらった。そんだけで十分か」
見慣れない笑顔があんまりにも愛しくて天音は冬森にキスした。
えろあほ男子は当然喜んで眼鏡男子に必要以上に過剰に過激に応えた。
ピザ注文はまだまだまだまだ先になりそうだ。
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