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39-6
「…………きつい…………」
閉ざされたカーテン、うっすら暗いワンルームの片隅で無意識に零れ落ちた天音の呟き。
「んっ……はぁっ……ぅぅぅ、ぅ、ぅ……っ」
ベッドの上で自ら両足全開となった冬森は息苦しそうに喉を反らしていた。
素っ裸になった二人。
天音の屹立した熱源が冬森の後孔に途中まで呑み込まれている。
以前ならば大歓迎、手厚くおもてなしするところだが、まるで訪問販売宗教勧誘お断りの門口であるかの如く、頑なにきつく閉ざされていた。
冬森がソコを使うのは卒業式の日以来だった。
修行先では旅館付近のアパートに住んでいた、まぁその気になればバックを使用しての自慰に至るのも可能ではあった、しかし、なんだかなぁ、という気持ちがあって、元ビッチちゃん男子らしからぬ貞淑ぶりで今日まで封印されてきたわけで。
「お前のために処女に戻ってやったんだよ、天音……」
再び黒髪を一つ結びし、こめかみに汗を滲ませていた天音に、冬森は嘯 いた。
鉛じみた熱い痛みと恍惚に貫かれ、濡れたペニスを従順に反り返らせ、日々課せられる重労働で引き締まった腹を撫で上げた。
「お前の痕、ここまでつけてみろよ……?」
天音は深く息を吸い込んだ。
肉圧に逆らって窮屈な仮膣に慎重に熱源を沈めていく。
気を抜けば果ててしまいそうな締めつけに身を委ねていく。
「あ、ん……すげぇ……天音の、熱いの……好き……」
急所となる喉笛を曝して大きく仰け反った冬森に天音は釘付けになった。
狭まり合う内壁を傷つけないよう、ゆっくり、律動してみる。
「あぅ、んっ……あま、ね、ぇ……っ……おれんナカぁ……拡がってる……お前のでいっぱい……」
天音のカタチ、今、思い出した。
横長の枕に片頬を押しつけて冬森はうっとり感嘆した。
かつてヤリチンくんビッチちゃん男子だったとは思えない一途っぷりで天音を我が身に閉じ込めようとする。
我が身に抱いて離さないよう貪欲に求めて。
徐々に馴らされ、突かれる範囲が広がると、睫毛まで満遍なく濡らして好きなだけどこまでも恍惚に溺れた。
「俺も冬森からの痕がほしい」
上体を倒し、胸と胸を重ね、呼吸が触れ合う距離で天音に請われて。
繋がった下半身のみならず脳天にまで昂揚感を行き渡らせた冬森は手を伸ばした。
「俺の痕なら、ここにもう、ついてんだろ……?」
左胸に到着した掌。
思ってもみなかった冬森の愛情表現に、天音は、自分の心臓を彼に独り占めされたような幻想を抱いた。
高校時代の他愛ない思い出たちがそこら中に息づいているワンルームで時間も忘れて二人は。
「行ってきます、天音」
「行ってらっしゃい、冬森」
三連休の最終日、Uターンする帰省客やら観光客やらで混雑する郊外の空港ターミナル。
殆どのシートが埋まっていた出発ロビーで冬森と別れた天音は、開放感が半端ない屋上の展望デッキまでやってきた。
やがて、轟音を伴い飛び立った飛行機が遥か頭上へ上昇していく、迫力感満載の離陸シーンを背の高いフェンス越しに見送った。
どんどん小さくなっていく機影。
吹き荒ぶ強風に一つ結びした黒髪を乱して天音は手を振った。
「あのおにーちゃん、おててふってる」
見晴らしは最高ながらも殊更寒い展望デッキ、訪れる人々は少なく、親に連れられて居合わせた小さなこどもに無邪気に言われて。
照れ笑いを浮かべた天音は、離れ難く、遠ざかった機影が視界から消え失せても冬森を見送り続けた。
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