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1-8 愛し合う★

***  俺たちのベッドはダイニングの奥の部屋にある。小屋自体が粗末な造りだが、寝室は殊更狭く、ベッドと衣装ダンスしか置かれていない。そして、ベッドはシングルベッド一つしかないから、事を終えた後も抱き合って眠るしかない。巨漢の俺と華奢なカミュでは、どちらかが上になり相手を組み敷くか人間掛け布団になる形となる。 「う……う……うああ……あ……い…くぅ」  そして、今、うわ言のように言葉にならない声を発しながら淫らに俺の腹の上で悶えているのが、相方のカミュ。騎乗位が俺たちカップルの基本的な性体位だ。カミュは顔を紅潮させ、騎手さながら俺にまたがり馬のように疾駆させる。  夜の営みについて話すのは、あまり得意ではないが、あえて記そう。  俺たちのセックスは、決まりがある。  原則、一日の日課として、ブロージョブがある。  カミュは毎晩俺の陰茎を必ずしゃぶることになっている。これは2年前、正確には1年半前に初めて契りを交わした時以来の約束事である。俺は射精寸前で彼の行為をやめさせ、性行為を続行するときは、大抵カミュに騎乗してもらうし、しないときは適当に抜き散らして白布で拭い、あとはお互いの愛撫の時間となる。  愛撫の時間はもっとも心安らぐときで、俺はその時間を大事にしている。  肛門性交を行うのは週に一度と俺が決めている。その日はたまたま、週一で村に買い出しに行く日の晩になっているが、まあいつでもいい。カミュは自称16歳と言ってはいるが、つい先日精通したばかりで、前にも書いたように声変わりはまだ、ヘアーもまだで、体が成熟していないし、さらに生来病弱なので、間隔をあけてやらないと体を壊してしまうだろうと俺は案じている。あいつは、無理をするとすぐに熱を出して寝込んでしまう。肛門性交なんて、無理な行為の代表格である。  しかしながら、相方はそれが不満でならないらしい。俺が毎日あいつの口で抜いているというのに、自分は週一でしかいかせてもらえない、不公平だと小言を漏らすことが少なくない。大抵は特に理由を言うこともなくスルーするのだが、愚痴があまりにひどいのでいつもより激しく犯してやると、満足するのかそれが癖になって、小言を言えば俺が抱いてくれると勘違いする。だから、やっぱり無視するしかない。可哀そうだけど、俺だってつらい。  あいつの口でいけるようになったのは幸いだが、やっぱり後ろの孔に挿れたい気持ちはある。俺は性欲が人一倍強いこともあり、毎日ブロージョブさせているが、とても助かっていて感謝の気持ちでいっぱいだ。それにカミュも俺のものを咥えること自体は嫌がっていないようだ。だけど、あいつの望み通りに毎晩抱いて愛してあげることが出来たら、二人とも満足しあえるだろうに。  騎乗位は俺の好きな体位であり、カミュも異存のない自然な性体位である。俺は下から相手を見ることが出来るし、それが荒くれた馬鹿でかい俺を御そうと汗を流すカミュのひたむきな姿が輝いて見える絶好のポジションである。一方、俺にとって序盤は楽な体位ではあるが、絶妙のタイミングで、すなわち、騎手が鞭を入れてより深い快楽を得ようとする時点において、鋭利かつ俊敏な反動を突き返してやらなければならない。  息があってないと感じあえず退屈に思える体位だが、相性がいいと、騎乗位なだけに馬が合うと、最高に絡み合える体位であり、愛のある共同作業と言えるだろう。 「あ……アレン……んん……そこぉ……イっちゃうよお」 「ここ?」  カミュの孔内の性感帯は心得ているが、騎乗位なので自分から当ててやることはできない。カミュが角度を調整してこすり合わせてくる。 「ふ……ふぅぅ……」  涙を流して喜び悶えるカミュに、んな大げさなと思ってしまうまだ冷静な俺がいる。 「はぁあ……あああ……アレン……」  つと、火照らせた顔を寄せて、赤い唇が囁くように言う。 「?」  キスがしたいのかと思い顔を寄せた。 「イっていい??」 「何度でも?」  心の中では苦笑しながら、俺はすまし顔で言った。ブロージョブのときはセックスの時まで絶対にイくまいと必死だったが、今はまだ余裕がある。 「ばかあ……」 「バカって言ったな??それっバカ馬のお通りだ」  俺がカミュの腰を抑えて、下から激しく突いてやると、後孔より体液が滝のように溢れ出て、カミュの背中は反り返り、ビクンビクンと痙攣した。何度目かのオーガズムである。面倒なので数えてはいないが、しばし動きを止めてやる。 「よだれが垂れてるぞ」  俺は手を伸ばし、カミュの口から伸びて光る一筋のよだれを拭ってやる。垂れたよだれは、指に絡めて舐めとった。淫乱な美少年が垂らしたとは思えない、崇高で甘美な味がする。 「ああん。ひどい……ひどいよ」  一瞬意識を失ったカミュも、すぐに戻ってきて、俺の陰毛を強くつかむと、また拍車をかけたように前後に体をゆする。 「アレン……お願い……もっと突いて……激しく……んんん」  ここまで来ると、より深い侵入を試みたくなり、騎乗位を辞める決断をする。俺が騎手になり、カミュを跪かせて後ろから突くのだ。俗にいうバック、後背位である。カミュは騎手から牝馬となり、俺に突かれて泣きながら走り出す。深く深く、そしてカミュの性感帯を的確に捉えて打ち抜くので、あれの声はさらに大きくなる。ここが周りに誰も住んでいない小屋で本当に良かったと思う。殺人事件の被害者の断末魔のような、隠しようのない大きな喘ぎ声がカミュの口から吐き出される。 「いや……あああ…イっちゃう……アレン……ごめん」 「ごめん?」 「先イっちゃうよ」 「何度もイってるだろ……」 俺はカミュの尻を軽くつねるように叩く。 「グスッ……アレンも……そ…そろそろイっていいからね?」  まだまだ終わらない夜がこれから始まろうというのに、カミュはいつもこのあたりで果ててしまう。俺も早めに切り上げないとな。  寝室にはない時計の針は、まだ9時を回ったばかりだった。

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