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8-7 馬乗り★

 アレンのペニスを咥えながら、この後自分が抱かれるのだと考えていたせいで、カミュの下肢は一層感じやすくなっていた。薔薇の蕾のような桃色の後孔からはすでに愛液が滴り落ちて床を汚しており、受け入れ態勢は十分に整っていた。  カミュがアレンにまたがると、濡れそぼる肛門が男の腹に当たった。 「卑猥な穴め。こねくり回してやる」アレンは理性が吹っ切れたのか意地悪そうに言う。 「早く俺を入れろよ……喘がせてやるから」乱暴で猥雑な言葉の挑発が、カミュを焦らせる。 「わ……わかってるよ」カミュは自分の穴を逸物にあてがった。  いつも思うが大きい。カミュの二の腕くらいの太さがあるそれが、唾液でどろどろに濡らされていたからといって、入れるのは容易ではない。  だが、欲しくてたまらない。一週間もお預けを食らっているカミュは、今夜を逃したらまた一週間も待たなくてはならないのだ。  勿論、アレンだってセックスは一週間ぶりであり、カミュにお預けさせるような余裕はない。早く乗らなければ、アレンに押し倒されて犯されるだろう。自立的に快楽を得たかったカミュの体は、アレンの体にぬぷぬぷと浸かってゆく。 「ん……んん……あ!あああ!…はぁ…ひ……ゃ」  変な声が出てしまったがそれどころではない。肛門の広がる痛みが瞬時に快楽へと変わり、脊椎から脳へと電流のように駆け上がる。言葉では到底表現できないような愉悦に襲われて、カミュの頭は一瞬真っ白になる。口の端がだらしなく開いて、よだれが垂れる。意識を失いかけるとき、カミュは甘い蜜を垂らすのだ。それをアレンが好物にしていることも知らず。  まだ、アレンの半分しか味わっていなかったカミュは、膝で支えながらゆっくりと体重をかけていく。内臓がぎちぎちと相方のブツに占められていき、直腸の奥にまで達したとき、カミュの体はようやく完全に開けられた。 「……く……はぁあ……」  ズーンという重い衝撃とともに愛液がほとばしり出て、アレンの黒い陰毛にびちゃっとかかった。アレンは結合の様子をじっと見ていたが、つとカミュの顔を見上げる。 「ああ……。アレン、アレン、うう。お……奥まで……入った。ああん。気持ちいいよー」  全てが収まっただけで、まだ動いてすらいないのに、こんなに感激するカミュの姿は今日が初めてではない。逆に言えば、二人の肉体関係が始まったときから、カミュは繋がると歓喜で子供のようにはしゃぎ、生き生きとした表情をするのだ。この時とばかりは、どんなに薄暗がりで交合を行っていても、カミュの顔にぱあっと光が降り注ぐような華々しさがあった。アレンは神がかっているとすら思うこともあった。  結合の喜びに震えて涙を流すこともあれば、痙攣で後ろにひっくり返ってしまうこともあれば、前のめりになって夢中で髭や胸毛を舐め始めることもあった。アレンはそんなカミュを見るのが何よりも好きだった。  とにかく、体の相性が良くないと、こんなことにはならないとアレンは思っている。そう冷静に観察しているアレンも、律動の準備が整ったとあっては、少しずつ心に余裕をなくしていく。性的な本能が理性を凌駕して、恋人を荒々しく犯したくなる。 「俺が動くか。お前が動くか。……どっちだ?早く決めろ」 「も……勿論、僕だよ。アレン……ああ……好きだよ」  白皙の美少年と言えないほど、カミュの頬は暗がりでもわかるくらい赤らんでいた。 「……俺も待てない。早く動いてくれ」  アレンはけしかけるようにカミュの尻を叩いた。促されてカミュは前後に腰を揺らし始める。 「ん……ん……んん……あ……いいよぉ……そこっ……はぁん」  開かれきった痛みを和らげるためか、内壁のいたるところからじゅわっと粘液がしみだしてくる。それは潤滑油となり二人のセックスを手助けする。内壁を棍棒のような肉塊に擦りつけるたびに前立腺が刺激され、カミュのペニスはアレンの腹の上で硬直していた。玩具の列車のような小さな肉筒に、アレンは手でトンネルを作り軽く扱いてやると、すぐに白色のあぶくを吐き出した。 「ふっ……くぁあ……い……ぃ……うぁ…」  カミュは己が吐精の度に淫靡な喘ぎ声をあげた。酸素の少ない池で鯉が苦しそうに水面に口を出すように、少年も上を向き口をパクパクさせていた。アレンはそれを下から面白がってみている。面白がっているのがわかるのが、カミュは気に食わず、男の陰毛を抑える手に力がこもる。 「カミュ、気持ちいいか?……もっとよがっていいぞ?」  アレンは余裕げに嘯く。絶対に演技だ。アレンだってもう限界なはずだ。カミュは頭がどうにかなりそうなのを振り払って、膝に力を入れて上下に躍動を始めた。  この先は一本の階段である。一段一段快楽の階段を上って、エクスタシーに達したらその先は知らない。翼が生えていくらかは飛べる。アレンより先に飛んでしまってごめん……。だが、夢から覚めれば二人は崖から転がり落ちて、明け方まで泥のように眠るのである。  体を突かれながら、ふとカミュは今日起きたことをまざまざと思い出していた。  僕がカボチャに細工をしてアレンを優勝させなかったのは、はたして意味があったことだったのか。僕が来たから魔導書がスられて、アレンはスリを追い詰め逮捕した。結果アレンは一躍村の有名人になりつつある。目立たせたくなかったのに、僕の思惑は完全に外れた。こうなる運命だったのかとしか言いようがない。  あの夜のことを思い出すと震えが止まらない。アレンが呪いをかけられた日。  ああ、アレン。君が僕に出会わなければ……。僕を助けようとしなければ……。  君は全然違う人生を送っていたことだろう。  どんなに良かったことか……。  いつの間にか、カミュは動くのをやめて両の手で顔を覆っていた。感じ入っているのだろうか。顔の見れないアレンには不満で、顔を覆う手を乱暴に薙ぎ払った。途端、アレンは目を疑った。 「どうした?泣いているのか」  アレンが見上げたカミュは眉をしかめ明らかに悲しそうな顔をしていた。双眸より二筋の涙が細い顎まで伝っており、手を払われた瞬間に雫がぽとりとアレンの腹に落ちた。 「痛いのか?」アレンは二人の繋ぎ目に手を添えて、匂いを嗅いだ。カミュが出血していたら、血の匂いがするだろう。 「う……う……」払われた手で再び顔を隠そうとするカミュと、そうはさせまいとするアレン。 「カミュ……やっぱり気分が悪いんだろ?だから、無理するなと言ったのに……」  アレンがそう言うと、カミュの腹の中でアレンのものがわずかではあるが明らかに萎むのを感じた。 「アレン。ダメ……抜かないで。僕は平気だから」 「何が平気だ。俺は嘘が嫌いだ」男は呆れたようにため息をつく。 「続けてよ。僕はもう何度もイったから。アレンも最後までイっていいよ……」 「バカ!」  アレンは噛みつくように言うとカミュの腰をぐっと握り、彼を抱き起して、埋まっていた自分のものを引きずり出した。 「ひゃあああ……」  ぎちぎちに密着していた逸物をいきなり引っこ抜かれて、カミュは思わず声を上げる。あられもない声をだして、いつもならアレンにからかわれるだろうが、怒っているのか反応してくれなかった。後孔は閉じきらず、まだ足りないとばかりにひくつき、穴からぼたぼたと体液を流している。  カミュが最後の余韻——嵌っているべき逸物の存在しない空虚さ——に苦しんでいる間、アレンも手ずから強引に陰茎を扱き上げ、肉棒の先にあてがった白布に向かって気怠そうに射精を繰り返していた。

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