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15-10 嫉妬心★

「もういいだろう。頃合いだ」  陰部からゆっくりと指を抜くと、カミュは切なげに声を漏らした。愛液に塗れいやらしく糸を引いた指をシーツで拭うと、カミュを回転させ抱き起す。赤く熟した胸の突起をペロッと舐めると、少年は痙攣するも放心したような顔をしている。本番前に何度かいってしまったのだ。 「僕、……乗るね?」やや気だるげに言うと、男は首を振った。 「いや。今夜は俺がリードする」  ——え。今なんて……?  アレンは、カミュに深い口づけをしたまま押し倒すと、先ほどの窄まりに唾液で艶めく亀頭を当てがった。不意に顔を近づけて、不敵に笑うと囁いた。 「お前を早駆けさせる。今日はお前がお馬さんだ」  濡れた先端を後孔の付近に擦り付け焦らしてくるので、カミュはアレンの両腕を掴んで早く入れてと目で訴える。 「そんな物欲しそうな顔をされると、余計に意地悪したくなるな。わかったよ。カミュ。ぶっとい鞭をくれてやるよ」と言うと、鞭なんて表現とは程遠い何か、例えるなら鋳造したばかりの熱を持った棍棒をずぶっと恥部に突き立てられた。アレンの手管により分泌された自家製の潤滑油により、それはぬぷぬぷと抵抗なく体内にめり込んでいくが、内圧は相当なものだ。 「はう……ぅん……う……ぅあ……」  怒張のサイズは馬のそれに近く、ぎちぎちという擬音が肉を伝わって脳内に聞こえてくる。背筋に電流が走り、その余波で手足の先まで痺れる。下腹が破裂してしまうんじゃないか、といつもながら不安になる。が、動かしても痛くないというのは何度も経験済みだ。中を満たしていた愛液が押し出されて尻に伝わるのが感じられた。  アレンは、奥までゆっくりと押し込んでゆき、腰が完全に交わると顔を上げて微笑んだ。彼の顔もトロンとしている。薬のせいか常より目が潤み、瞳の奥で何を考えているのかわからない。優しげにも見えるし、凶暴性も秘めているように見えた。 「やっとだな。……動かすぞ」  抽送が開始され、生々しい反復音とともに淫らな喘ぎと浅い吐息が漏れる。カミュは顔をしかめ体を強張らせ、なるべく声を出したくなかったが、アレンの上体が近づいてきた。顔を唇で愛撫しながら、誘うような眼差しで見入ってくる。まるで、食べられてしまいそうな、野生の獣のような瞳をしていた。  ——こんなアレン、見たことない。  ノルマンさんが、アレンのことを野獣なんて言っていたけど、今までは彼をそんな風に思ったことはなかった。初めてのセックスで僕を壊した時でさえ。けど、今は違う。なんか、怖い。飲み込まれてしまいそうで……。  ノルマン……と思い出し、カミュは首を振った。くそぅ。ノルマンさんの馬鹿……。 「何を考えている?カミュ。騎乗位の方が良かったか?反応が鈍いぞ?ホテルだからって我慢しなくていい」  アレンはカミュの胸に指を這わせ、喉やら鎖骨にキスを落としていく。普段より優しく、吸い付きも甘いが、繊細な少年の体には十分すぎるほどの刺激だ。 「ふぅ……つぅ……ああ!!」脇の下を幅広の舌で舐められると、カミュは大声を上げた。 「いい声だ。もっと鳴け!」下げようとした腕を掴んで固定すると、腰の動きを速める。 「ああ!ダメ!!イく……イく!!いや!……アレン、……ああ!!」 「イけ!!」顔を隠そうとするカミュに対し、その顎を己に向けさせる。 「アレン、だめ……。ぼ…く……はぁ、……ああ。イく!イくぅ!!」 「俺の腕に抱かれて、何度でもイってくれ。その代わり、あへ顔は見せてくれよ」と、笑いながら重い一打を打ち込むと、カミュの目はたちまち虚ろとなった。 *** 「ノルマンさんの馬鹿……」  二人が身を離し、しばしの小休止をしているときに、カミュが小声で漏らした声をアレンは聞き洩らさなかった。彼は弄んでいたカミュのペニスを掴みなおした。萎れていたそれがピクリと震えた。 「……ノルマン?あの雑貨屋のおやじのことか?なんであいつの名を?」ずいと体を寄せると、怪訝な顔でカミュを覗き込む。 「え……?」 「ここに来るまでの間、あいつに何かされなかったか?」 「何かって?」  何度も達した後のカミュは陶酔に身を任せていて、思考が定まっていなかった。男の言いたいことがわからない。 「……。あいつ、お前に気があるんじゃないのか?そんな素振りがある」  ——ええええ!!?  アレンの発言に顔が引きつり、脳内が急激に覚醒を始めた。  それは絶対ない。断じてない。勘違いが過ぎるよ、アレン氏!ノルマンさんは君狙いだって。本人がそう言ってるんだから。  まあ、たしかに彼に対してはすごく礼儀正しく接しているような感じがするから、気があるようには見えないけど。一方で僕との距離は近いからなあ。それに、アレンの鈍感さも手伝って、ひどい誤解が生まれている。  こんな状態にしたのも、全部ノルマンさんのせいなのに。しかし、アレンに話したらぶっ殺されそうで怖い。 「何で黙ってるんだ?……何かあったのか?タジールに行く話は、向こうから持ち掛けられたとかじゃないだろうな」 「そ……それは違うよ。君たちが町に行くというのを聞いて、僕が頼んだんだ」 「俺がお前を置いていくことを見越してか?」痛いところをついてくる。 「う……そうだよ。君は僕を置き去りにすると思ったから」 「ふん。お前も俺の手を読むようになったんだな。奴に唆されたのか。胡散臭いからな」 「ノルマンさんは、そ……そんな人じゃない」……はずだけど、偽薬を盛られてなおもかばう自分の頭がこんがらがる。いや、ノルマンさんは信用できない!!心とは裏腹な言葉を吐き出し疑問符だらけのカミュに対し、アレンの誤解は順調だ。 「やけに必死にかばうんだな。荷馬車で何かされたんじゃないか」 「そんな馬鹿なことをするわけないじゃない。君の行方を追っている最中にノルマンさんと?ありえない。……アレンさん、それ、嫉妬だよ」 「ああ、わかっている。嫉妬だ」  素直に認めるアレンの顔には、明らかな劣情が表れていた。さっきまで、何度も体をひっくり返されて、様々な体位でイかされたというのに。下腹に視線を移せば巨塊が天を向き昂ぶりを抑えきれないでいる。ああ、もう……。  壁の掛け時計は午前1時を指していた。

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