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16-10 屈辱の棒★

 ギヨームは細い棒を瓶の底まで挿して、指で口を塞ぐと瓶を逆さにして振るった。そして、液体に塗れ緑に染まった棒を取り出すと、扱かれて蜜を流している亀頭の窪みに突き刺した。 「いや!!いや!!ダメ!!ダメダメダメ!!!あああ!!」  カミュは体を反らして嫌がるも、数人がかりで押さえつけられた。男は一旦棒から手を離すと、カミュの頬を強くひねりあげて怒鳴る 「馬鹿なマネするんじゃねえ!動いたら怪我するぞ!」  耳かきの如く細い棒とはいえ、そんなものを尿道に挿したことはない。どんな性癖の人間がこんな残虐なことをするのだろう。だが、その人間は目の前にいる。浅ましい悪鬼のような形相をして、力任せに棒を押し込んでいく。切り傷を押し広げられるような痛みと熱湯をかけられたような疼きが先端より下腹に伝っていき、カミュは激痛に震えながら涙を流した。 「ようし。奥までついたな。抜き差ししてやる」 「やめて……やめてください……痛いです。死んで……しまう」 「死にやしない。もうすぐ気持ちよくなる。約束してやるよ」  ——約束だなんて。……こんなことで約束だなんて、屈辱だ。  カミュの懇願は聞き入られることなく、細い棒は尿道を何度も往復した。 「ああ……痛い……痛い……くぅぅ」  棒に絡まっていた緑の粘液が通り道でぐりゅぐりゅと押し問答をしていて妙な圧がかかる。視覚的にも痛々しい光景なのだが、液体の染みた部位から肉が解れて一本の紐に撚られていくような、理屈では到底説明できないような法悦が湧きおこる。人間は元来紐だった、といっても過言ではないくらいに、肉欲が別次元のモノへと昇華されていく気がする。痛苦の先に見えてきた暁のような喜びに、カミュは目を細めた。 「ああ……あああ……い……いい……ふあ……ああん」 「ははは。いい感じに馴染んでやがるぜ。一丁上がりだな、こりゃあ」  まるで弦楽器のように、摩擦の加減で赤らんだ口元から嬌声が紡がれる。ひとしきり奏でた後、細い棒を抜こうとするとカミュの熱い手がそれを遮った。体を震わせ悶えている。頬に涙を滴らせた瞳は潤み、視点が定まっていない。 「ぬ……抜かないで……。気持ちい……い」 「おいおい。こんな淫らな獲物、初めてだぜ。なあ、お前ら。……残念だが、お前だけが気持ちよくなるのは反則だ。俺達にも奉仕してもらわないとな」  棒を引き抜くと、直立した肉筒の先端から透明な蜜が溢れ出た。水圧を損なった噴水のように勢いはないが、それがカミュとは別個の下等生物の如く体液を吐き出すさまを男たちは凝視していた。白いナマコでさえ、ここまで卑陋(ひろう)ではない。 「ふ……ぐうぁ……ふぅ……うぁあ……」  全身の脱力に感じ入って声を出すカミュ。体中が燃えるほど火照って赤くなり、目を瞑って浅い息を吐いている。 「神というものは我々に平等に(さが)というものをお与えになった。(にえ)は十分に喜んだ。我らは熟れた贄を屠ろう」ギヨームは不可解なことを言ったかと思うと、カミュの上体を乱暴に起こした。少年は、男が下半身を露わにしてもぼんやりと見つめていた。 「これが欲しかったんだろう」 「……あ……」カミュは吸い寄せられるように男の逸物に顔を近づけた。  が、眉を顰め、嫌悪に顔を顰めた。正気に戻ったのだ。  ——アレンさんじゃない。  眼前にそそり立つペニスは当然、相方のモノではないのだが、カミュにはそれがたまらなく不快だった。  第一、天を衝くような美しい形をしていない。アレンの逸物は勇者が最上階に控えた魔王を倒しに登らねばならない大塔のような、生の歓喜に溢れた勇壮な出で立ちをしている。  一方でこちらは太さばかりが際立ち、頑固に張り出したえらを除けば、それは泥で汚れ切った大根のようである。陰茎のそこかしこから根っこのような縮毛が生えていて、浮かび上がる血管も狭細な上、とぐろを巻いていて薄気味悪い。  第二に匂いが違う。アレンのペニス、というより体臭はカミュを誘惑するに適切な雄の色香を醸している。いつもの嗅ぎ慣れた匂いに少年は安堵して胸に飛び込んでいけるのだ。  だが、ギヨーム達から発する臭いは危険信号そのものだ。吐瀉物の臭い、それは犯罪に染まった者どもの悪癖に染まった生活習慣からくるものだろう。  アレンは健康的な食いしん坊で、一日三食しっかりとバランスのとれた食事をしているが、奴らは違う。大酒、煙草、そして麻薬に手を出し、ろくな食事をとっていなければ、服を洗濯もしない。赤切れした肌、黄ばんだ目やににも不健康さが表れているが、饐えた体臭が鼻につく。  そしてなによりも、カミュにとってアレンは大切な人だ。アレンを誰のモノにもしないため、カミュは彼のモノになると約束した。僕はアレンの所有物であり、アレンの体を慰める者であり、彼以外はどんな人間もどんな物も自分にとって取るに足らないものなのだ。アレンにのみ許している体を他の者に、しかも極悪非道の大罪人に好きにさせるなど、到底降心(こうしん)しえないことだった。 「ほら。咥えろよ。犬が」  ギヨームとともにズボンを下げた男たちが、罵りながらカミュの頬に先端を擦り付けた。濡れたドアノブのようなひんやりとした感触に少年は体をビクッと震わせた。 「い……嫌!!いやだ!!」 「はあ?いまさら何を言ってるんだ?おい!しゃぶれよ!ボケッ!!」と、無理やり口をこじ開けられ、ヘドロのような臭いの亀頭が突っ込まれた。 「ふ……ふぐっ」  目を丸くするカミュの喉奥に容赦なく突き立てられる陰茎。息が出来ず意識が朦朧としてくると、視界の断片が殊更に強調されて目に入ってくる。いやしい男たちが次は自分の番かと、口元に笑みを浮かべながら各々の息子を扱いているのが見えた。 「噛んだりしたら承知しないからな!」男はにやついた顔に眼光鋭くすごんで見せる。 「う……うう……あうぅ……げえ……」  ようやく抜いてもらえた口の端からは、泡だらけの精が垂れていた。下半身を露出した次の男がのそのそと近づくが、カミュは激しく嘔吐した。

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