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第13話

 キッチンからお茶を入れたグラス二つと、炭酸飲料水を入れたグラスを一つ用意して部屋へ戻ると、二人の姿がそこになかった。  嫌な予感がする。  持っていたそれらを勉強机の上に置き、廊下へ出て耳を澄ませる。予感的中だ。仁の部屋から、伊織の楽しげな声が聞こえてくる。  苛立ちが込み上がり、仁の部屋のドアを勢いつけ開いた。 「何でこっちにいるんだよ」  ベッドへ腰かけている仁の腕に、伊織がしなだれかかっていた。俊介は、ベッド脇の床へあぐらをかきながら唇を噛み締め二人を見つめている。  仁に視線を向けられた。 「俺は別に構わんよ。こんな風に好かれて悪い気はしないし」  氷柱が胸に突き刺さったような感覚だ。確かに、自分への恋心を消してくれと願った。しかし、こうも昔と違うものを見せ付けられては――たまらない。この仁は、俺のものではないのだ。  笑顔の裏側に、全ての感情を隠す。 「じゃあ、飲み物はこっちの部屋に持ってくるから」  足、震えていなければいいけれど。  廊下に出たとたんに滲んできた涙を、喉の奥へ流し込んだ。

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