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第19話
「やっぱり、髪は後で。ベッド……行こう」
キスをしながら囁くと、仁の肩が微かに震えた。
「本当に、どうしたんだ? そんなことを自分から言うのは初めてじゃあないか。まさか熱でもあるとか? いや、さっき触れた額は熱くなかったよな」
額に手を当てられた。唸りながら首を傾げている。
「今までの俺がどうかしていたんだ。これが本当の俺。我慢してきたのが伊織のお陰で爆発したみたい」
にこりと微笑む。
仁から探るような視線が送られてきた。きっと、こんな俺に慣れるまではこうして、何かがあるのではないかと疑われるだろうけれど、それでも、そんなことはどうだっていいかと思えるくらいの愛を仁へ届けたい。動かぬ足のせいで疑心暗鬼に囚われてしまっていた今までの長い年月を取り戻すために。
頬へ軽いキスが降ってきた。それから、車椅子の背を押される。
玄関に入り、そこで車椅子から抱き上げられ――……顔を埋めた胸から聞こえてくる心臓の音が、とても速い。
「仁、すごくドキドキしてないか?」
ふと視界に入ってきた首筋が、真っ赤に染まっていた。
「そんなことはない」
どうしてそんなにぶすっとして……ああ、照れくさい、のかな。俺からからかうことって滅多にないし、いつもは仁がそうしているのだから。
思わぬ可愛さを見せられてしまい、胸がキュンと締め付けられた。この、溢れ出す愛しさを仁にしっかりと示したい。
部屋に入ると優しい手つきでベッドへ仰向けに寝かされた。
上から覆いかぶさってくる仁に、手で待ったをかける。
「ティーシャツ、脱ぐ」
「……自分から、脱ぐのか。今までそんな素振りを見せたことがないのに」
呆気に取られたような表情だ。
「素直になるって言っただろ」
笑顔を作る必要はない。これが、俺の、心からの感情。
仁が目蓋を閉じた。何かを考えているようだ。眉間に微かな皺が寄っている。
「ズボン。脱がせたい?」
唇の端を舐めて言う。
獣のように低く唸ったかと思えば、仁は突然カッターシャツを乱暴に脱ぎ捨てた。
裸になった上半身は、細身なのに筋肉がしっかりとついている。俺をいつでも抱き上げられるように、だろう。日々身体を鍛えていることを知っているのでその綺麗な身体が余計に眩しく見えた。
仁がベッドの上に膝をついた。ズボンの裾を握ってきたので急いでボタンとファスナーを下ろす。
そのまますぽんっと音がしそうな勢いで足からズボンを引き抜かれた。それを床に落とすと、露になったパンツへ顔を近づけてゆく。
「もう、反応しているんだな」
艶めいた声にぞくりとしたその時、突然、パンツの上からペニスを柔らかく食まれた。
「だっ、て……俺、弱いんだから……すぐにイッちゃ……っ」
根元を食まれ、亀頭を指でこねるように弄られて、布の擦れる感じと与えられる刺激とで一気に体温が上昇した。
パンツが仁の唾液でベチャベチャに濡れた頃、ようやく唇が離れていった。仁も前が窮屈になったようで、ズボンとパンツを同時に脱いでゆく。
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