23 / 26
第23話
「枕の下にローションあるだろ。それ、取って」
その言葉へ素直に従った。
小さなボトルに移し変えたローションを手渡すと、片手で器用にキャップを外し、中身をもう片方の手のひらに流してゆく。その粘着質な液体は、窓から差し込む明かりを受けてぬらぬらと光っていた。
綺麗な方の手で膝を寄せられ、その裏側を持ち上げられて、尻を露にさせられる。
「少し冷たいかもしれんが、我慢しろよ」
頷く間もなく尻を割られ、穴の周りにローションを塗りつけられてゆく。
その長く骨ばった指が自分の中に入ってくるのだとわかった瞬間、わき腹から肩にかけてざっと鳥肌が走った。
穴を広げようとしているのだろう。何度も指が中を出入りし、それに自分の肉が反応して、ひくつく。
浅ましいくらいに願っている。早くそこに欲しい。中で、一番奥深くで仁を感じたいと。
前立腺を弄らないのはわざとか。じらされているのか。もどかしくて喉が鳴る。
「ま、だ……? もう、お願いだ、待てないっ」
自分の声がこんなにも掠れるなんて。
仁の指の動きが激しくなった。ぐにぐにと壁を何度も押され、肉を掻き分けられる。
先走るものが、止まる様子を感じさせない。首を下げて己のペニスへ視線を向けると、亀頭から腹部へそれは糸を引くようにして流れ落ち、小さな池を作っていた。濡れ光る先っぽが、自分のものだとわかっているのに卑猥に見えて興奮は高まる。
全身から汗が滲み出ているような感覚。息は上がり、身体が熱い。
ずるりと指が抜けてゆき、寄せられていた膝が開かれた。
仁の手が膝から腿へ滑り落ちてくる。もう、本当に、我慢できない。その撫でられるような手つきが下腹部を疼かせてきて――
「欲しいか?」
穴に、あてがわれる、熱。
頷くのに、そこへ擦りつけられるだけで、入れてくれない。
「な、んで……」
「欲しいか?」
またたずねられた。そんなの、決まっている。
「中、欲しい……仁のペニスで、中、引っ掻いて……っ、掻き回して、奥まで、突いてっ!」
叫ぶように言うと、すぐに仁のペニスが中へ入ってきた。強制的に穴が広がる感覚に眉が寄る。
仁の、眉も、寄っていて――上気した頬が色っぽい。
まず亀頭がめり込んできて、それから、ゆるゆると出入り口付近を擦っていたかと思えば、唐突に奥へ突きたてられた。
声にならぬ悲鳴が喉から飛び出した。首が仰け反る。
ぽたりと何かが落ちてきて、必死に視線を戻したら、それは仁の額に滲んだ汗だった。
――いや、汗だけじゃあない。
潤んでいる、瞳。
「響。響っ」
胸が破裂してしまいそうだ。
人は、こんなにも人を好きになれるのか。誰でもそうなのだろうか。それともこんなに強い感情を持てる人間は、自分だけなのか。
たずねられた通り、ずっと、ずっと、欲しかった。仁の愛を、真実だと感じたかった。
ともだちにシェアしよう!