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第23話

「枕の下にローションあるだろ。それ、取って」  その言葉へ素直に従った。  小さなボトルに移し変えたローションを手渡すと、片手で器用にキャップを外し、中身をもう片方の手のひらに流してゆく。その粘着質な液体は、窓から差し込む明かりを受けてぬらぬらと光っていた。  綺麗な方の手で膝を寄せられ、その裏側を持ち上げられて、尻を露にさせられる。 「少し冷たいかもしれんが、我慢しろよ」  頷く間もなく尻を割られ、穴の周りにローションを塗りつけられてゆく。  その長く骨ばった指が自分の中に入ってくるのだとわかった瞬間、わき腹から肩にかけてざっと鳥肌が走った。  穴を広げようとしているのだろう。何度も指が中を出入りし、それに自分の肉が反応して、ひくつく。  浅ましいくらいに願っている。早くそこに欲しい。中で、一番奥深くで仁を感じたいと。  前立腺を弄らないのはわざとか。じらされているのか。もどかしくて喉が鳴る。 「ま、だ……? もう、お願いだ、待てないっ」  自分の声がこんなにも掠れるなんて。  仁の指の動きが激しくなった。ぐにぐにと壁を何度も押され、肉を掻き分けられる。  先走るものが、止まる様子を感じさせない。首を下げて己のペニスへ視線を向けると、亀頭から腹部へそれは糸を引くようにして流れ落ち、小さな池を作っていた。濡れ光る先っぽが、自分のものだとわかっているのに卑猥に見えて興奮は高まる。  全身から汗が滲み出ているような感覚。息は上がり、身体が熱い。  ずるりと指が抜けてゆき、寄せられていた膝が開かれた。  仁の手が膝から腿へ滑り落ちてくる。もう、本当に、我慢できない。その撫でられるような手つきが下腹部を疼かせてきて―― 「欲しいか?」  穴に、あてがわれる、熱。  頷くのに、そこへ擦りつけられるだけで、入れてくれない。 「な、んで……」 「欲しいか?」  またたずねられた。そんなの、決まっている。 「中、欲しい……仁のペニスで、中、引っ掻いて……っ、掻き回して、奥まで、突いてっ!」  叫ぶように言うと、すぐに仁のペニスが中へ入ってきた。強制的に穴が広がる感覚に眉が寄る。  仁の、眉も、寄っていて――上気した頬が色っぽい。  まず亀頭がめり込んできて、それから、ゆるゆると出入り口付近を擦っていたかと思えば、唐突に奥へ突きたてられた。  声にならぬ悲鳴が喉から飛び出した。首が仰け反る。  ぽたりと何かが落ちてきて、必死に視線を戻したら、それは仁の額に滲んだ汗だった。  ――いや、汗だけじゃあない。  潤んでいる、瞳。 「響。響っ」  胸が破裂してしまいそうだ。  人は、こんなにも人を好きになれるのか。誰でもそうなのだろうか。それともこんなに強い感情を持てる人間は、自分だけなのか。  たずねられた通り、ずっと、ずっと、欲しかった。仁の愛を、真実だと感じたかった。

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