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余韻2
彰広がこの部屋に透を連れ帰ってから、真田が透の側にいることを命じられていた。
真田は若く、極道に見えにくいからだろう。それに真田の彰広に対する憧れと忠誠心は、他の者には負けなくらいに強かった。
透は深く眠っているようで、今朝は部屋から出てこなかった。
昨日、透が部屋から出たいと苛立っていたのを思い出す。無理もない。
軟禁状態が続いているのだ。
黒田の部屋に踏み込んだとき、真田も彰広の後ろから付き従っていた。
あんなにも怒りを露わにした彰広を見たのは初めてだった。
どんな場面でも、彰広の顔にはいつもどこか冷めた部分があった。
あの日、彰広は誰にも見せないように、透をシーツに包んで抱きかかえたので、透の顔を見る事はできなかった。
この部屋で透の顔を初めて見たとき、真田は驚いた。
今まで彰広は、クラブのNO.1ホステスなど、美しくて色っぽい女達と関係を持っていた。
彰広の相手が男だと知り驚いたが、「どんな美青年なんだろう」と、興味もあった。
だが、透はごく普通の青年だった。
最初は少し怯えたそぶりで、日中ほとんど寝室から出てこなかったが、最近は真田と話もするようになった。
ほんと、ふつうの男だよな。
彰広とそうゆう関係だということも想像がつかなかった。
ぼんやり考えていると、寝室のドアが開いた。
「あ、透さ……!?」
ドアの方を見て、真田は固まった。
透は素肌にシーツをまとっただけで出てきた。
その顔は普段と違い、激しい情事に疲れていて、妙に艶っぽかった。
昨夜、散々泣かされたのだろう。目元は赤くなっていた。
唇はぽってりと腫れぼったく、気だるげな眼差しはひどく卑猥だ。
マジかよ!!
真田は心臓が早鐘を打つのを感じて、自分でも驚いた。
普段の透に色気など皆無だったのに。
透はハッと気付き、バタバタとバスルームに向かった。
落ち着け。俺。
真田は一呼吸置いて、透が着替えを持っていなかったのに気付いた。
だが、ハウスクリーニングを任されている中年女性以外は、寝室に入ることは許されていなかった。
真田は透がシャワーから出てくるまで、ベランダで待つことにした。
タオル一枚で出てこられては目の毒だし、それに………組長に殺されちまう。
真田は窓を開けて、ベランダに出てタバコを吸った。
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