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真田2
「最初は………驚きました」
空になったゼリーの容器を見ながら、真田は答えた。
「でも、組長の大切な人なら、俺にとっても大事な人です」
「子守りみたいなことをさせられてるのに?」
「はい。組長が俺に任せてくれたんですから。それに、子守りじゃないですよ」
透は複雑な気持ちで真田を見た。
「俺、組長のこと尊敬してるし、憧れています。ずっと、あの人についていくって、決めてるんです」
真田は真っ直ぐに透を見て告げた。
透は少し気まずい気持ちになり、目を反らせた。
はっきり言葉にされた訳ではないが「お前はどうなのだ?」と問われたような気分だった。
今までのように、ママゴトのような付き合いはもうできない。
自分の人生を彰広に捧げることができるのか?
彰広は心を決めている。
今まで隠してきた透の存在を組の者に知らせ、八雲や真田のように納得させた。
閉じ込められ、苦痛に近いくらいの快楽をもって抱かれているが、「好きだ。愛している」と、透に囁き続けている。
………彰広のことは好きだ。
こんな状況でも、離れたいとは思わない。だからと言って、このまま男妾のように暮らすのは嫌だった。
どうしていいのか分からない。
この状況に満足して、彰広を受け入れ、彰広の為だけに生きる。
透がそうすれば、彰広は満足なのだろうか?
でも………嘘はつけない。
透は小さくため息を吐いて、ゼリーを口に入れた。甘いはずだが、ろくに味を感じなかった。
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