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迷い2
彰広がベッドルームを出ていく気配を感じ、透はゆっくりと目を開けた。
この二週間、ドロドロになるようなセックスを繰り返している。
そんな中、久しぶりの感覚だった。
触れるだけの口付けは。
「………」
彰広は切なげに透の名を呼んで、そっと唇に触れた。
まるで自分の方が彰広を傷つけているみたいだ。閉じ込められているのは自分の方なのに。
透の胸が軋む。
彰広は好きだ。離れたくはない。
でも、男妾のように囲われていたくはない。
黒田がどうなったのか知りたい。
………でも、彰広が何をしたのか聞きたくない。
堂々めぐりの陰鬱な考えがループする。
この部屋もベッドも、彰広の匂いで包まれている。
息苦しくなった透はベッドを抜け出し、そっとベランダに出た。
少し生ぬるい夜風に当たりながら、彰広の事を考えた。
彰広に迷いは無い。ただひたすら透を求めているだけだ。
なのに、自分は………
透はベランダの手すりにもたれて、大きなため息を吐いた。
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