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迷い3

「透っ!!」 ぼんやりと夜景をみていたら、彰広に慌てた声で名を呼ばれ、勢いよく腕を後ろに引かれた。 「うわっ!」 倒れそうになったのを、彰広の逞しい腕でがっしりと抱きとめられる。 そのまま部屋に引き入れられ、強く強く抱きしめられた。 「彰広?」 震えてる? 「透………透………」 俺が飛び降りるとでも思ったのだろうか? 震える声で名を呼ばれ、胸が痛くなる。まだ濡れた彰広の髪を落ち着かせるように撫でた。 「彰広。俺はどこにもいかない」 透は彰広の逞しい背中に手を回し、抱き締め返す。 ………ああ、そうだった。 こんな風に切ない響きで名前を呼ばれると、全部許してしまう。 彰広のために俺はどうしたらいい? 「俺はここいるよ。彰広」 彰広の濡れた髪に手を滑らせ、そっと口付ける。数日ぶりに透は自分から彰広に口付けた。

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