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執着心2
透は一人、寝室で横になり考えを巡らせる。
幸いなことに、この軟禁生活は考える時間だけはいくらでもあった。
彰広はいつから俺を想っていたんだろう。
透は幼い頃のことをぼんやりと思い出す。小学校二年頃だったろうか………。
彰広とは同じクラスだった。
彰広の母親は不倫相手と出て行った。幼い彰広と父親を捨てて。
今なら分かる。彰広の父親は彰広を育てるということを放棄していた。金銭的にはそれなりに裕福だったが、あれはネグレクトだ。
幼い彰広が暗くなった公園で一人、ぼんやりと座っていたのを思い出す。
透は家に帰っても、それが気になって、母親が夕飯の準備をしている隙に抜け出して公園へ戻った。
『なんで帰らないの?』
『うるさい。どっか行けよ』
『もうすぐ夜になるよ?』
『うるさい』
『おこられるよ。あきひろ』
『うるさい! おまえは帰れ!』
不毛なやりとりを続けたものだ。
でも、どうしても彰広を放っておけなかった。
『じゃあ、なんも言わない』
透は黙って彰広の隣に座った。
『………おい。おまえ帰らなくていいのかよ?』
しばらくして彰広が聞いてきた。
『帰らないといけないよ。こっそり出てきたから、おこられるなぁ』
いやだなぁ、と言ったら彰広は奇妙なものでも見るように透を見た。
『バカか、おまえ』
『バカ言うやつがバカ』
そう言い返した透に、彰広は思わずといった様子で笑った。
『やっぱ、おまえバカだろ』
『うるさいなぁ。だまってよ』
最初とは逆になった。
『家まで一緒に行ってやるから、帰れよ』
『うん』
立ち上がった彰広に手を引かれ、透も立ち上がる。この頃は身長も同じくらいだった。
透のうちまで彰広は一緒に来た。
抜け出した透に気付いた母親が慌てて飛び出したところに遭遇して、「自分を心配して透は公園に来てくれた」と母に説明していた。
とても大人びた声で。
その日は、透の母親のごり押しで彰広は透のうちでご飯を食べた。
今思えば、母は分かっていたのだろう。彰広の父親に連絡を入れて、度々、彰広を呼んで食事を一緒にするようになった。
………母さんも懐の深い人だよな。
その頃、父は単身赴任中で、透は母親と二人暮しだった。
透の母親は穏やかで、ふんわりとした雰囲気だったが、意思が強く、こうと決めたらやり遂げるタイプだった。
それから、彰広と透は幼馴染みとして、誰よりも一緒にいる時間が増えた。
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