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その全て2
八雲が部屋から出て行っても、透はテーブルの上に置かれた鍵をじっと見つめていた。
しばらくそうしていたが、透は鍵を手に取って、ゆっくりと立ち上がった。
この鍵を使うか、使わないかは、透次第だ。
八雲によって、いつものように閉ざされたドアを見つめた。
………ゼロか、百か。
透は鍵を持った手をゆっくりと持ち上げた。
深夜近くになって彰広は部屋に戻った。
鍵を開けて部屋に入ると、床に落ちているものを見つけた。
「!?」
拾い上げて、この部屋の鍵だと気付く。
なぜ、これが!?
「真田!」
急いでリビングに入ったが、室内は暗く、人の気配が無い。お目付け役の真田がいない。透も………
彰広は指先から冷たくなっていくのを感じた。
─────透!!
足元からガラガラと崩れ堕ちていくような感覚に陥っていた。
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