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第5話

幸久が「さぁな」と答えドライヤーを戻しに行って1人残された旭はスマホを洗面所に置き忘れていた事に気付いて彼の後を追いかけるように取りに向かった。 幸久の姿を捉え声を掛けようとした時、不意に聞こえてきたのは信じられない彼の言葉だった。 「好きだ、大樹……。」 聞いてはいけない物だと思わず隠れてしまった。 好き、とはどういう意味での好きなのか? 恋愛での好き?まさか……。 だって幼馴染みで男同士だ。 そんな筈はないとその考えを消そうとするも何故だかモヤモヤと残ってしまう。 結局聞かなかった事にしてその後を過ごし大学生活をスタートさせた。 「ほら旭、そろそろ起きろ。 授業遅れるぞ。」 「ん~。」 この日の授業は午後からでそれまでぐっすり眠っていた旭は仕事が休みの幸久に起こされ、眠い目を擦りながらリビングへとやって来た。 すると食卓に昼食であるうどんが置いてある。 「さっさと食え。 時間もないだろ。」 「ああ……。」 もうすぐ家をでなければならない旭の為につるつると食べやすいうどんを作った。 「頂きます……。」 ゆっくりとうどんを一口食べると旭は二口目からガツガツと食べ始めた。 「そんな慌てて食うと喉詰まるぞ」 「だってなんか美味いし。 レトルトとかとなんか違う。」 「ははっ、一応自己流にアレンジしてるからな。」 美味いんなら良かったと微笑む幸久に旭はドキッとした。

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