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第6話

少しカールした黒髪から垣間見える気だるげな二重の目を細め見つめる幸久を見ていると顔に何か付いてるかと笑われ、別にと目を反らした。 自分は一体何を考えているんだ? 笑う幸久を見てカッコいいと思った? 身体の奥が疼くこの感覚を俺は知っている。 別れた彼女に恋をした感覚と同じだ。 なんでこんな感情を彼に抱くのか分からないがきっと父を好きだと呟いたのを聞いた事がきっかけなのだと旭は考える。 「はぁ……」 「どした? ため息ついて。」 「え?ああ、いや別に……。」 大学で知り合った友人が不思議そうに聞いてくるので適当に誤魔化したが旭の頭の中は幸久の事でいっぱいだった。 仮に幸久を好きになったとして、自分はゲイではない筈。 目の前の友人がもしも、自分に告白してきたとしよう。 無理だ。 申し訳ないがセックスどころかキスすら絶対出来ない。 それを幸久に置き換えてみたらどうなのか? 答えは"分からない"。 自覚したばかりではまだ何とも言えないのだ。 「それはそうとさ、この後コンパ大丈夫? 可愛い()いっぱい来るみたいだよ?」 「………まぁ、大丈夫。」 友人に誘われ特に用事もないし、断る理由も無いと参加することにした。 「吉野君ってカッコいいよね~ モテるでしよ?」 「そんなことないって。」 顔のいい旭はあっという間に女の子の注目の的となり囲まれる。 本来なら嬉しい筈のこの状況も何でだろうか、無性に帰りたくなった。 女の子と連絡先を交換したものの結局さっさと帰る事にした。

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