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第7話
コンパからの帰りにふと、街中の巨大スクリーンに目をやった旭。
そこには今人気の俳優が出演しているCMが流れているのだが、彼だったら恋人になれるかと考えてみる。
確かに男から見てもカッコいいがときめかない。
憧れはしても彼とどうにかなりたいなんて毛ほども思わないのだ。
だからこそ自分が分からなくなった。
「マジで俺キモいんだけど……。」
旭の呟いた本音は人混みの中で空しくかき消された。
「ただいま。」
「おう、お帰り。
楽しかったか?」
帰宅した旭をリビングで迎える幸久は今日はコンパで夕飯はいらないと連絡を貰っていた為どうだったのかと聞く。
「まあまあ、かな。」
「そうか。
まぁ、それはいいとして風呂入れ。
香水臭い。」
女の子が近くに居たせいか、香水の臭いが移っているようで幸久は眉を顰めた。
幸久はどうも香水が苦手なのだ。
「分かった。」
素直に風呂に向かう旭に普段生返事だけで中々行動しないのくせに今回はすんなりと行ったことに少し驚いてしまった。
どういう風の吹きまわしなのかと逆に心配してしまう。
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